「シン・ウルトラマン」興行収入を予約座席数で予測、東宝の業績への影響は?Photo:PIXTA

映画業界のビジネスモデルをご存じだろうか。「映画業界はもうかってそう」という漠然としたイメージをお持ちの方も多いと推察するが、実際は複雑で必ずしも高収益率なビジネスモデルではない。その仕組みについて簡単に説明し、それを基に東宝の『シン・ウルトラマン』のヒットが業績に及ぼすインパクトについて考察してみよう。(hands COO 門脇蒔人)

映画業界の
ビジネスモデルとは

 1本の映画を制作・公開しようとしたときに、ステークホルダーは複数社いる。映画を制作(※)する制作会社、製作された映画の配給権を調達し映画館(興行先)に上映交渉をする配給会社、配給された映画を上映する興行会社が連携し、1本の映画が完結する仕組みとなっている。

 では、映画業界の収益はどのようになっているのだろうか。映画業界が得ることのできる収益には食べ物やグッズなどもあるが、基本的に大部分を占めるのが興行収入である。興行収入とは観客がその映画に支払った入場料の合計金額のことで、ニュースなどで映画の人気度を表す際によく用いられるのを見たことがある方も多いのではないだろうか。収益配分はその時々によって異なるが、目安としては興行会社に5割、配給会社に1~2割、制作会社に3~4割というように分配される。

 日本の映画業界では、映画大手3社として東宝、東映、松竹が挙げられる。3社ともに制作・配給を兼任しているほか、興行会社も持っている。通常、映画を制作から公開まで行うに当たっては1社のみで全てを行うのではなく、複数の会社が連携して制作、公開することが多い。これは映画の興行収入が万が一振るわなかった際に赤字の幅を抑制するためである。

(※)映画業界では、「製作」と「制作」を使い分ける。「製作」はお金の拠出も含めた総合プロデュースも含めた主体、「制作」は映画を作るクリエイティブ主体を指す。

『シン・ウルトラマン』は
今期業績をけん引できるか

 さて、ここからは本題の『シン・ウルトラマン』について見ていこう。