株式の投資判断に使うデータは日々進化を続けている。例えば、『鬼滅の刃』や『シン・エヴァンゲリオン』などヒット作品を連発している東宝の株式購入を検討する場合、どのような投資判断をするだろうか? 本稿では、東宝を例に取り、近年注目される「オルタナティブデータ」の活用方法を伝授する。(hands COO 門脇蒔人)
東宝に投資したい!
どのデータで判断する?
株式の投資判断に使うデータは、日々進化を続けている。例えば、TOHOシネマズを運営する東宝の株式購入を検討する場合、どのような投資判断のプロセスを踏むだろうか?
近年の東宝は、『シン・ゴジラ』や『君の名は。』に代表されるメガヒット作品を自社企画で生み出し、大規模な駅付近にTOHOシネマズを出店することで記録的な動員数を狙う事業戦略を取っている。そのため、同社の業績予測には各映画館の動員数、特にメガヒット作品の動員数の把握が極めて重要であることは、投資家の大半が理解しているだろう。
ここ数年であれば、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』や『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の動員数が投資家の注目を浴びていた。これらの作品は、メディアに興行収入が発表されるが、週次で集計したデータを数日後に発表するケースが多く、動員とデータ公表にタイムラグが発生する。さらに、公開から月日が経過すると、メディアの注目度も低くなり、「類似作品は過去にこれくらい伸びていたから、この作品もこれくらい伸びるだろう」という予測をせざるを得ない投資家が多いのではないだろうか。
ここで、図1のチャートをご覧いただきたい。
図1 「鬼滅の刃」と「シン・エヴァンゲリオン」のチケット予約数の推移
(出所) PERAGARU提供のチャート
上は『シン・エヴァンゲリオン』(2021年3月8日公開)の公開直後1カ月のチケット予約数、下は『鬼滅の刃』(20年10月16日公開)の公開後1カ月半~2カ月半の予約数のチャートである。このデータを見ると、『シン・エヴァンゲリオン』は公開直後こそ多くの人が観賞していたが、その勢いが徐々に弱まっていたことが分かる。一方で、『鬼滅の刃』は公開から日数が経過すればするほど人気が上昇していることが読み取れるだろう。