ビルは木造ハイブリッド構造Photo by Yohko Yamamoto

米の酒が持つクラフトマンシップの魂を
日本橋兜町から発信!

 銀行発祥の地で、東京証券取引所と共に発展した金融の街、東京・日本橋兜町。2009年に株が電子取引化されると、証券会社は引越し、激減する。現在は再開発により、感度の高いホテルやカフェが集う街に進化中だ。

 今年の6月に木造ハイブリッド構造で建造されたビル、KITOKI(キトキ)が完成し、醸造と提供を行うブルワリーパブスタイルの平和どぶろく兜町醸造所がオープン。手掛けたのは、日本酒「紀土(きっど)」やリキュール、クラフトビールを醸す和歌山県の平和酒造。

「米の酒をもっとカジュアルに楽しんでほしい」と4代目の山本典正さんが英断した。「どぶろくは日本酒の原点で庶民の酒。明治時代に製造が禁止され、清酒とは生き別れの兄弟のように」。

 醸造室は4坪の狭小スペースで、仕込み水は酒蔵から輸送。和歌山県産米のにこまるを90%精米で使う。1回に仕込む量はわずか7リットル!この少量仕込みを生かし、実験的などぶろくを試みる。

 小豆や黒米、雑穀などの多彩な副原料を加えてバリエーション豊かに、フレッシュな生どぶろくを提供。

「昔は米が貴重で、畑で取れた豆や雑穀も入れたはず。それを現代の日本酒の技術でどぶろくに」と山本さん。

 カウンターに立つのは杜氏や蔵人たち。「醸造を感じられる場にしたい。どぶろくは間違いなく、米の酒への入り口になってくれるお酒です」。

 最終的には日本酒へ誘導したいと期待を込める。世界に誇れる米の酒、そのクラフトマンシップの魂を日本橋兜町から発信する。

平和どぶろく平和どぶろく
●平和どぶろく兜町醸造所・東京都中央区日本橋兜町8番11号 KITOKI●代表銘柄:平和どぶろく、平和どぶろくprototype、1年熟成どぶろく●杜氏:柴田英道●主要な米の品種:にこまる