有機米で金賞受賞の蔵が目指す、
おいしい、安心、楽しい酒!
栃木県大田原市の天鷹酒造は、地元消費8割の地酒蔵。蔵元の尾﨑宗範さんは、安心・安全な酒造りを目指し、2000年に有機JAS法が制定されると勉強を開始した。
有機栽培米は収量が少なく、有機加工場の認証は難易度が高いが、挑戦を決意。05年から、当時の杜氏、直町昊悦(すぐまち・こうえつ)さんと有機の酒造りに邁進する。
いざ始めてみると、蔵の限界も見えてきた。古い土蔵の酒蔵は水洗いできず、消毒には薬品が必要で、衛生区域も分割できない。だが、建て替えには莫大な費用がかかり、それが悩みの種に。
大きな転機は、11年3月11日に発生した東日本大震災だった。
激しい揺れでタンク内のもろみは天井まで跳ね上がり、壁は崩落。
「酒造りがしたいと心の底から思って」宗範さんは大決断する。
貯蔵庫と仕込み蔵を取り壊し、新造した。平屋で床はフラットに設計。フォークリフトを活用すれば、重たいタンクも楽々移動できる。力仕事は機械化し、女性が活躍できる酒蔵になった。
季節雇用を廃止して、地元の正社員に体制をシフト。14年に米国、欧州の有機認証を取得し輸出を伸ばす。
17年に全国新酒鑑評会で、会史上初となる有機の酒が金賞を受賞。18年には念願の天鷹オーガニックファームを設立した。地元産の梅を使った梅酒や、蜂蜜を発酵させた酒も開発して新規の客を増やす。
21年に長男の俊介さんが入社、父子“天”鷹の蔵に。モットーの「おいしい、安心、楽しい酒造り」でさらなる先を目指す。
●天鷹酒造・栃木県大田原市蛭畑2166●代表銘柄:有機純米大吟醸 天鷹、有機純米吟醸 天鷹、純米大吟醸 天鷹心、辛口特別純米 天鷹●杜氏:大宮金充●主要な米の品種:五百万石、山田錦、あさひの夢