ロシア国民に制裁の痛み 特効薬は現金支給Photo:Contributor/gettyimages

 ロシアは西側諸国の制裁による影響を取り繕うため、石油やガスで得た数十億ドルに上る資金を国内にばらまいている。

 この資金は、制裁がロシア市民にもたらす痛みを和らげている。だが、ロシア経済は西側諸国を大幅に上回る高インフレに見舞われているほか、供給不足で生産が大きく落ち込んでいる。政府やエコノミストらの予測では、今年の国内総生産(GDP)は10%縮小すると見込まれている。

 ロシア政府当局者の間では、多額の戦費をつぎ込む一方で経済を刺激しようとする政策がもたらす代償について、懸念する声が聞かれ始めている。

 ロシア政府は、子どものいる家庭、妊婦、公務員、年金受給者にカネを支給している。一方、不動産開発業者から航空会社まで幅広い企業も、主にウクライナ侵攻に伴う原油価格の高騰による恩恵を受けている。

 財務相によると、今年の連邦支出はウクライナ侵攻前の予測を約12%上回り、財政収支は赤字になるとみられている。一方、景気刺激策はプーチン大統領と侵攻への支持を固める効果がある。プーチン氏はそれにより、制裁がロシアよりも西側諸国を苦しめていると主張できるからだ。