ハイテク分野のスタートアップかいわいにはリセットの波が押し寄せている。ブームの象徴だったソフトバンクには、そのツケが回ってきた。ソフトバンクは幹部の刷新に乗り出した。2017年に10兆円規模の「ビジョン・ファンド」立ち上げに関わったラジーブ・ミスラ氏は、社外の新規ファンド運営に軸足を移す。元ドイツ銀行トレーダーの同氏は引き続きビジョン・ファンドを統括するものの、後継ファンドの「ビジョン・ファンド2」からは手を引く。会社を去る幹部もいる。こうした人事は、創業者である孫正義氏の性急な投資スタイルを安定させるための重しが軽くなることを意味するかもしれない。一例が米シェアオフィス大手ウィーワークへの巨額投資で、多額の評価損を計上したこの案件にミスラ氏は反対していた。孫氏はスタートアップ企業の評価額をつり上げることで知られている。求められている以上の資金を提供し、成長に向けた投資を惜しまないよう発破をかけるやり方は、好況時にはうまくいくかもしれない。だが、現在のような逆風下にはなじまない。