安倍晋三元首相が8日、暗殺された。67歳だった。戦後の日本で、安倍氏ほど重要な指導者はほとんどいなかった。同氏の遺産について「賛否両論」とみる向きは多いだろう。その見方は正しい。だが、日本が必要としているまさにその時、そうした論争をもたらしたことこそが安倍氏の贈り物だった。2012年末に安倍氏が首相に返り咲いた頃、日本はさまよっているように見えた。経済の奇跡は遠い過去となり、2000年代初めの小泉純一郎首相時代に漂っていた楽観主義は消え去り、2011年に発生した東日本大震災による心の傷はまだ生々しかった。安倍氏は、日本の政治と政府に活力と国民の信頼を取り戻させた。安倍氏はこうした不安感漂う2006~07年に短期間、首相を務めた後、瀕死(ひんし)の状態にあった日本経済を再生すると約束し、再び首相となった。アベノミクスと呼ばれたその政策は3本の「矢」から成るものだった。日本銀行は積極的な金融緩和を行い、政府は財政支出を押し上げた。安倍氏は自ら先頭に立って経済改革と自由化を推し進めた。