ジョー・バイデン米大統領は、トランプ政権が発動した対中制裁関税を一部撤廃する可能性がある。これは米労働者や企業に打撃を与え、既に深刻化している米国の対中貿易赤字を拡大、知的財産権の侵害をめぐる米政府の対中交渉力を弱め、米国の安全保障上の利益を脅かすことになる。米政府は、インフレを抑えることができると称して関税撤廃を正当化しようとしているようだが、その主張はナンセンスだ。バイデン氏が撤回しようとしている制裁関税は、1974年制定の米通商法301条に基づいて導入され、発動された時点では経済全体にわたる物価への影響はほとんどなかった。消費者物価指数(CPI)の上昇率は、発動後に若干減速した。関税のコストが、値下げや通貨下落を通じて中国の生産者によって負担されるのではなく、米消費者に転嫁されていれば、一時的な物価上昇を引き起こしただろうが、今日のインフレの要因とはなり得ない。