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インキュベーションの虚と実

起業家教育の旗手スティーブ・ブランク氏に学ぶ
シリコンバレーの経験を集約した経営・教育ツール

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第19回】 2013年1月21日
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 あなたが創業するとき、その事業で20年の経験があり、ソースコード(笑)、いや知識を前職から持ってこなければ、最初に考えたビジネスモデルはまずうまくいきません。スタートアップは、大企業の小型版じゃない。大企業の様に5年の事業計画を書いても、そんなのベンチャー・キャピタルと旧ソビエト連邦しか必要としない。

 従来型のスタートアップは、例えばこんな感じです。ビジネスプランを書いて、チームを雇って、部屋にこもって、ウォーターフォール方式で開発して、アルファとベータのテストをして、製品をローンチして、お披露目パーティをやって、ブログやプレスに書いてもらって、取締役会でマーケティング担当のヴァイス・プレジデント(VP)が「注目を浴びていて期待が高い」という話をする。

 6週間後の取締役会でセールス担当のVP(営業部長)は“great pipepline”(見込み客がたくさん)と報告する。これは、実際に顧客はいないが、希望を持っているという意味だ(笑)。そしてさらに数ヵ月後の取締役会で、マーケティング担当のVPは再び素晴らしいアナウンスをするが、セールス担当VPが言う見込み客からの受注はなく、動きはないまま。

 一年後の取締役会で取締役や投資家たちはCEOを睨み、誰もセールス担当VPの隣に座ろうとせず、間もなくクビになる。そして創業から15ヵ月後の取締役会で新たなセールス担当VPが「なんて愚かなことをしてるんだ」と言って、転換する。それがピボットだった。失敗するたびにセールス担当VPをクビにするという、ひどい様だ。

*  *

 スタートアップは未知の可能性はあるが、不確実性に満ちている。だから、なかなかうまくいかない。シリコンバレーでも従来は、初期のプランにしがみつき、とにかく前に進むのが常だった。その過ちをユーモアたっぷりに皮肉るブランク氏の指摘は、笑う前に自らのこととして受け止めておきたい。日本でもこれと同じことがスタートアップから大企業まで多々みられるのが現実なのだ。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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