フィリピンの二つの都市は、仕事中に笑顔を絶やさないことを市の職員に義務付けた。従わなければ罰金か停職、または解雇される可能性もある。これは、いつも気難しげな官僚の不愛想さを解消する草の根運動の一環であるようだ。この方針を打ち出した2人の市長のうち1人が、ニューヨークのブロンクスに10年間住んでいたというのは気になるところだ。人々がぶっきらぼうなことで有名なニューヨーク市の五つの区の中でも、ブロンクスは特に不機嫌な度合いが強いことで知られている。ここでの主な問題は、「仕事が懸かっているから笑う」というやり方が機能するのかということでなく(フィリピンは政府に対して反対を表明することが決して賢明ではない国のようだ)、笑顔の強制が国境を越えて広がるか、ということだろう。フランスの不愛想なウエーターが注文を取るとき、まるで客の願いを特別にかなえてやっているといったようにふるまうのを法的に止めることができれば、明らかに人類にとって素晴らしいことだ。そうなれば、われわれは皆、自由と平等と博愛の世界の住人となり、クロワッサンとチョコレート入りパンを間違えただけのことで、おのを持った殺人鬼のような気分を味わわなくても済む。