写真:部屋に引きこもる10代女性写真はイメージです Photo:PIXTA

最近、相次いで社会的弱者が自ら命を絶つという事件が起き、韓国社会に悲しみを与えている。韓国社会では、古くからの儒教精神に基づいて「家族のつながりが深い」「親族で助け合うのが当たり前」といった家族との結び付きが強調されてきた。しかし今回起きた2つの自死事件をきっかけに、韓国の美徳とされていた「家族、親族の絆」は、実は上辺だけのものなのではないかという議論が起きている。そしてどちらも、日本でも起こりそうな事件なのだ。(韓国在住ライター 田中美蘭)

児童養護施設を退所した大学生が、将来を悲観して自殺

 一つ目の事件は、南部の都市・光州(クァンジュ)で起きた。18歳の男子大学生が将来を悲観した遺書を残して自殺したというものであった。人々がより強く衝撃と悲しみを受けたのは、彼の生い立ちであった。

 両親の不和と育児困難という理由から、幼くして児童養護施設(韓国ではこうした施設を保育園と呼ぶ)に入所した彼は、成長と共に韓国国内の施設を転々とし、最終的に光州の施設に落ち着いていた。そして、この春に高校を卒業し、光州の大学に奨学金を受けて進学したのであった。

 受験競争が非常に激しい韓国で、施設出身者ながらも奨学金を受けて大学に合格したということは、彼はとても真面目な努力家であったのではないかと察せられる。しかし、新生活をスタートさせながらもその心中は期待や希望よりも将来への不安や現状への絶望が勝っていたようだ。

 さらにその数日後には、まるでこの事件に触発されたかのように、施設を退所して間もない19歳の女性が今後の生活への不安を苦に自殺をしたというニュースが報じられ、悲しみが深まっている。