4年前、ディラン・フィールド氏はサンフランシスコ市内の薄汚れたミッション地区にあるワンベッドルームのアパートに住み、通勤途中に1杯1ドルのコーヒーを買う生活を送っていた。フィールド氏は無名で、内気な人間だった。市内のベンチャーキャピタル企業が開く交流会では、きまり悪そうに飲み物をちびちび飲みながら、一人で立っていることが多かった。今月15日、フィールド氏のデザインソフトウエア会社フィグマは同業のアドビに200億ドル(約2兆8500億円)で自社を売却することで合意した。30歳のフィールド氏は突如としてテクノロジー業界でもっとも話題に上る人物の一人になった。フィグマはフィールド氏がブラウン大学時代の友人であるエバン・ウォレス氏と共同で創業した。シリコンバレーの基準から見ても同社の成長は著しく、企業価値は2018年初めには1億1500万ドルだったが、昨年には資金調達ラウンドで100億ドルと評価された。アドビへの売却額はその2倍だ。ここ数カ月、公開・未公開を問わずほとんどのテクノロジー企業の株価が急落する中で、フィグマの企業価値が急上昇したことは注目に値する。