アマゾンはこれまで、あらゆる業態に対して買収を実施してきたが、今回の39億ドル買収は、過去3番目に大きい案件である。それだけアマゾンの本気度がうかがえる。ちなみに、トップは2017年に買収した食品スーパーの米ホールフーズ・マーケットの137億ドル(1兆9000億円)、2位は今年初めに実施した米メトロ・ゴールドウィン・メイヤー・スタジオ(MGM)の85億ドル(1兆1000億円)だ。ヘルスケア関係では、オンライン薬局ピルパックを7億5000万ドル(1050億円)で買っている。

グーグルから誕生

 アマゾンが買収したワンメディカルは、どのような会社なのだろうか。現在流行している、利用者が年間199ドルを支払えば、プライマリ・ケアをバーチャルケアと直接訪問を提供するサブスクリプションモデルをベースとした会社だ。ワンメディカルはもともとは米アルファベット(旧グーグル)のグーグル・ベンチャーズというベンチャー支援事業によって誕生した。遠隔医療サービスを24時間年中無休でアプリやビデオを介したオンデマンドで提供するほか、当日か翌日の予約が可能な125を超える診療所と提携、契約者に利用を促す。ミレニアル世代、Z世代(80年代後半以上に生まれた世代)をターゲットとしている。

 会社レポートによると、ワンメディカルは3月時点で約76万7000人と契約、188の診療所と提携している。また、同社はいくつかの主要な都市で事業展開しており、8000以上の企業と協力して、従業員にワンメディカルの健康保険を提供している。将来性のある企業であることは疑いようもない。

 ここでアマゾンのヘルスケア戦略を振り返りたい。最初のマイルストンは、18年のオンライン薬局ピルパックの買収である。その後、ピルパックの事業を深化させるかたちでアマゾン・ファーマシーを開設。医師の処方箋に書かれた医薬品を注文すれば、数日で患者宅まで届けるシステムを構築している。21年には、従業員向けの社内プライマリケア及び緊急ケアサービスであるアマゾン・ケアを全国の事業主に販売を開始した(ワンメディカル買収で年内に終了)。

 一方、苦い経験もある。18年には、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏とJPモルガン・チェイスのジミー・ダイモン氏が、米国医療提供体制の問題を解決するため、保険会社的な役割を担うメガベンチャー「ヘイブン」を立ち上げた。3社の従業員給付を標的としたが、21年1月に解体が決まり、2月に爪痕も遺せず消滅した。だが、その後も虎視眈々とヘルスケア事業の拡充を狙っていた。

 今後考えられる最終的なビジネスモデルは、日常生活を支えるアマゾン・プライムの会員のペイシェント・ジャーニーを支えるため、ワンメディカルを統合し、ショッピングとヘルスケアを融合させたプラットフォームを提供することだろう。例えば、アレクサを利用し、診療の予約、日々の投薬、健康状態を記録させ、アマゾン・ウェブ・サービスでデータを蓄積する。同時に、日常のショッピングのアドバイスをアレクサからリコメンドできるようにする。

 患者が抱える疾病に応じた書籍やサプリメント、処方箋をアレクサやアマゾンのウェブサイトから購入。近くにホールフーズがあれば、患者の疾病に応じたレシピを紹介する。そして、診療当日にはアレクサにリマインドしてもらう。診療所に向かう道中はアマゾン・ミュージックを聞きながら移動できる。ワンメディカルの主力である遠隔治療で済ますことも可能となる。

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必ずしも、米国民はこの破壊的イノベーションのチャンスを喜んでいない

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