Photo:医薬経済社
アステラス製薬の最主力薬である前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の米国特許切れまで、残り1年半弱となった。28年夏には欧州で、29年夏には国内での物質特許も満了する。イクスタンジが26年3月期に見込む売上高はおよそ9400億円。足元の伸び率を考えると、番狂わせでも起きない限り、事実上のピーク時売上高となる27年3月期には1兆円の大台に乗ってくるものと予想される。
周知の通り、年間売上高がグローバルで1兆円を超えた例はほかになく、ここだけを取り上げれば泌尿器系の疾患に深い知見を持つ同社の面目躍如といったところだろう。しかし、この金字塔が向こう数年間のうちに10分の1程度にまで減ってしまうのもまた避けられない現実で、これを国内業界で比較すれば、ちょうど協和キリンと田辺ファーマを合わせたくらいの規模のビジネスが消滅する計算となる。
敢えて類似の事例を挙げれば、00年前後から一気に進んだカメラのデジタル化で写真用フィルム市場が蒸発し、企業存亡の淵に立った富士フイルムと並ぶような局面と言えるかもしれない。ただし富士フイルムの場合は、米ゼロックスと合弁出資した複写機子会社から上がる安定収益があり、これを保険として抱えながらヘルスケア分野に「全フリ」することで難局を乗り越えた。
しかしながらアステラスを巡る環境は、より悲劇的と言える。経営を下支えする有力なグループ企業もなければ、将来を賭けようとしている新フィールドもいまだ雲を掴むようなレベルでしかないからだ。まず、パテントクリフ対策は尿路上皮がん治療薬「パドセブ」を筆頭とする複数の重点戦略製品の伸長を、指折り数えて待たねばならない。さりとて、特定の疾患領域やアンメットメディカルニーズに研究開発リソースを集中する「フォーカス・エリア・アプローチ」とAI創薬を掛け合わせるR&Dの抜本改革も、現時点でPOC(概念実証)を取得できた化合物が皆無であるなど不発にとどまっている。







