だが、必ずしも、米国民はこの破壊的イノベーションのチャンスを喜んでいない。米国では今回の買収に関して、厳しい視線が注がれている。同社が発表した直後、米国の規制当局に対し、プライバシーに関連した問題があるとして、買収の承認を阻止するよう求める動きがある。その背景には、21年に、ワンメディカルが新型コロナワクチンのガイドラインを無視し、同社の従業員や家族、友人への予防接種を優先していたことが発覚、米国議会が調査に乗り出したことがある。米国民はワンメディカルのガバナンスに不信感を抱いている。
また、アマゾンはこれまで多くの消費者データを収集している。今回の買収が成立すれば、アマゾンはワンメディカルが培ってきた患者データと自社データを組み合わせ、アマゾン独自のIT技術を使うことで、患者の医療行動や消費行動取引を追跡、ターゲティング、操作、悪用するのではないかという懸念の声も根強い。
実際、米連邦取引委員会(FTC)が調査に入るようだが、破談になることはないだろう。
アマゾンは買収で米国民が必要としているサービスのほとんどを手に入れることとなる。オンラインマーケットプレイス、ホールフーズの食料品販売、ストリーミングサービス、スマートスピーカー、クラウドコンピューティングサービスを提供するライフ・プラットフォーム企業へと変貌を遂げるだろう。ワンメディカルの米国20都市180以上の診療所を活用し、対面診療からバーチャルケア、アマゾンの持っているメールオーダー処方、食事療法と付随するさまざまなヘルスケア製品のショッピングまで含め、個人、企業のヘルスケアでの悩みを解決する。つまり消費者の人生すべてをサポートする企業になるのだ。
もっとも、消費者がすべてアマゾンに依存するのかは、疑問ではある。




