東邦ホールディングス東邦ホールディングスホームぺージより
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 東邦ホールディングスは6月の株主総会、役員人事を経て新しい経営体制に移行している。最も注目すべき点は、長年グループで経営トップの座に君臨し、指揮を執ってきた濱田矩男氏(82)が取締役を勇退する人事だ。

 濱田氏の今後の役割について会社側は「最高顧問」という肩書で、これまでの経験や知見を生かし「助言」を行うと説明している。業界内では、東邦グループに影響力を持ち続けてきた濱田氏が在籍する限り「院政を敷く」と半信半疑の見方があるが、一時代が終わったと見るのが妥当だろう。論拠はいくつか存在する。

「うちの会社で『人事部をつくりましょう』と進言するのはタブー。子会社に飛ばされる」

 子会社を支配・統治する立場の事業持株会社の東邦HD社内では、実しやかに語られてきた。理由は「人事はすべてトップが決めるから」と明快だ。しかし、そのトップの濱田氏が取締役を6月29日に退き、直後の7月1日、それまでは口に出すことすら厳禁だった「人事部」がついに新設された。

 また、法的ではなく任意の組織とはいえ、取締役の諮問機関として「指名・報酬委員会」を設置。濱田時代には見られなかったこうしたガバナンス強化も、新生・東邦グループを物語る動きだ。

 指揮権“禅譲”の最たる論拠は、傘寿を過ぎた濱田氏の「健康不安説」がここにきて社内外で盛んに指摘されていることだ。一応、本人はもともと、東京五輪を区切りに「引退」を示唆していた。文字どおり有言実行となると、競合卸や取引メーカーの「次の関心事」は、業務提携してから4年が経過したスズケンとの経営統合の「有無」に移っていく。