ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、冷戦の忘れられた教訓を思い出させてくれた。抑止力とは、単に核戦争を防ぐためだけのものではない。米国と北大西洋条約機構(NATO)の同盟国は、2月にプーチン氏が通常戦争を始めることを抑止できなかった。この失敗の代償は血と涙に加え、ウクライナとの戦いを続けるために必要な軍事・経済支援、欧州に波及する経済ショック、南半球の政府を不安定にする食糧・燃料インフレに及んでおり、今後も続くだろう。通常の抑止が中国に対しても失敗し、中国が台湾を攻撃することになれば、その代償はさらに大きくなるだろう。ウクライナ人は少なくとも戦場から逃げ出すことができた。台湾の人々は島に閉じ込められ、戦争にのみ込まれたら行き場がない。世界経済に与えるショックは計り知れないほど大きい。台湾海峡と南シナ海の世界貿易における重要性は黒海をしのぐ。台湾をめぐる戦争で世界のサプライチェーン(供給網)が破壊されるのは、コンピューターチップだけではない。中国・ベトナム・韓国・日本で生産されるあらゆるものが不足することになる。世界の金融市場は大混乱に陥るだろう。日本と韓国は、燃料や食料の深刻な不足に直面するだろう。アフリカと中南米は甚大な経済的被害に見舞われるだろう。
【オピニオン】米軍の少ない予算、大きな犠牲のもと
ウクライナの教訓:抑止力は核戦争を防ぐためだけのものではない
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