軍事的挑発の応酬により
高まる偶発的な衝突の恐れ
米韓対北朝鮮の軍事的挑発の応酬で、軍事衝突の危機が芽生えている。双方とも相手の挑発行動に対し、危険を回避する動きに出る気配はない。このままいけばどこかの時点で、偶発的な衝突が起きかねない。また、先制核使用をちらつかせる金正恩(キム・ジョンウン)総書記がいつ無謀な行動に出るか分からないのも気がかりである。
もともと北朝鮮の核・ミサイルは、通常戦力で米韓に比べ格段に劣る北朝鮮が、自国を防衛する抑止手段として開発したものである。
しかし、北朝鮮は今年4月、金正恩氏が朝鮮労働党のトップについてから10年目の報告会で、崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長が演説を行い「国家核武力の歴史的大業を実現した」と金正恩氏の業績を称賛した。さらに、9月17日の最高人民会議では、核先制使用の具体的手順を定める法制化を行った。これは北朝鮮の核・ミサイル戦略を、抑止目的から先制使用も辞さないものに大転換させたことを意味する。
北朝鮮は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が北朝鮮との融和を唱え、核ミサイル開発を見過ごしてきたのを幸いに、開発を着々と進めてきた。
発射を事前に探知することや迎撃が困難な各種のミサイルを開発した。これに戦術核兵器を搭載して韓国を攻撃する可能性も危惧されている。さらに射程1万5000kmの大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星17を開発し、これに多弾頭を搭載することも視野に入れている可能性もある。
しかも、最近のミサイルの連続的かつ多くの地域からの発射は、北朝鮮の核ミサイル開発が実験段階から実戦配備段階に進んでいることを物語っているといわれている。
こうした現状への対応を抜本的に見直しているのが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権である。尹政権は、北朝鮮の挑発行動にはそれに見合う対抗措置を講じるとともに、米国との同盟関係を強化して米国の戦略兵器や核の傘による拡大抑止を確実なものとするとともに、合同軍事演習を再開して、北朝鮮の脅威の拡大に対抗している。それは北朝鮮の激しい反発を招いている。