総合小売り業界がイオンとセブン&アイ・ホールディングスの大きく二つに集約されつつあるなか、中部圏を地盤とするユニーは、関西のイズミヤ、四国のフジと手を組んだ。これらの提携で巨大2グループに対峙しつつ、投資を限定地域に集中することで“スーパー・リージョナル・チェーン”として生き残りを図る。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

【企業特集】ユニー提携と差別化戦略で狙う“超”地方小売りチェーン
ピアゴは生活密着型のスーパーで、生活必需品を中心に扱う

 1月29日、食品スーパーと医療機関が併設した「ピアゴ ラ フーズコア黒川店」(名古屋市北区)がオープンした。1階が食品スーパー、2階には内科、整形外科、泌尿器科、歯科のほか介護デーサービスが入る。3~8階は子会社のユーライフが運営する高齢者向けの賃貸マンションという構成だ。

 売り場面積300坪と小さい店にもかかわらず、オープン初日は買い物客でごった返し、入場制限がかかった。

 ユニーの前村哲路社長は、「2010年度も小売りにとって厳しい環境が続く。店の力を発揮するため、現場や店長に権限を委譲して個店経営のウエートを高める」と話すが、黒川店はその先駆けだ。

 もともとこの地では、ユニーが1970年に開業した総合スーパーが営業していたが、老朽化に伴い08年にいったん閉鎖。新たな活性化の道を探り、出した“答え”が医療機関との併設店だった。

 黒川地域は、全人口における60歳以上の比率が、愛知県の平均よりも高い。

 この立地特性に合わせて、健康生活提案型の店を目指した。1階の食品スーパーでは、しそ酢やコラーゲン入り食材など健康関連食品を数多く取り扱い、目立つ場所に集中陳列している。今後は「2階の医師との連携で、医師が推奨する商品を取り扱っていく」(北村善則・ピアゴ ラ フーズコア黒川店店長)予定だ。ほかに、一人暮らし世帯が多い地域事情に合わせて、小分け食品の品数を充実させている。

 店舗の設計でも現場の裁量が取り入れられた。当初、出入り口は2ヵ所の設計だったが、1ヵ所に制限した。「店内が狭く従業員の数が少ない。こうした条件で、お客様に目配りするには、出入り口は1ヵ所のほうがよい」(北村店長)との判断だった。

 黒川店は、“衣食住(住は商品)”を揃える総合スーパーから、時代の変化に合わせて“医食住(住は住宅)”を提供する店へと生まれ変わったのだ。