キラは霧のかかった森に入ると、科学捜査のごとく丹念にオークやポプラの木の周辺の匂いをかいだ。北イタリアが産地として知られる貴重な白トリュフを犬が探し回るのがこうした場所だ。しかし警察犬であるキラが探していたのは毒だった。トリュフハンターたちは森に毒入りの食べ物を隠し、お互いの犬を毒殺しようとした。イタリアの軍警察はその取り締まりに動いている。11歳のキラの仕事はトリュフをかぎ当てる「トリュフ犬」が怪しい物を食べないようにすること。「キラは他の犬より先に毒入りの餌を見つけなければならない」。軍警察のエマヌエーレ・ガッロ氏はそう言うと、キラのあとについて下草の生えたぬかるんだ地面を歩いていった。