ロシアのウクライナ侵攻による天然ガス価格の高騰を受け、欧州は風力や太陽光発電の導入計画を加速している。しかし、相次ぐ新規プロジェクトで地域の景観や文化遺産、貴重な観光産業が損なわれるとして、地元住民や当局者の反対を受けている。マリア・マルティンさんと夫は6年前、スペイン北西部ガリシア州の田園地帯に観光客向けの静かな隠れ家的宿泊施設をオープンした。数キロメートル先には海があり、同じ谷には有名なサンティアゴ巡礼路の巡礼者が訪れるスペイン最古の大聖堂「サン・マルティニョ・デ・モンドニェド」がある。夫妻ら住民は、宿の近くに高さ約105メートルの風力タービン群を建設する計画に抵抗している。米アルコアは、約23キロメートル西のサンシプリアンに所有する巨大なアルミニウム精錬所を再稼働する上で、それらを含む200基以上のタービンを頼りにしている。同社は2021年、ロシアがウクライナ侵攻を前に天然ガスの供給を断絶し始めたことで電力価格が高騰し、同製錬所の休止を余儀なくされた。