新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はキーエンス、ファナックなどの「製造用機器・システム」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
キーエンスが営業利益率5割超えの裏で
マキタの利益面は絶不調に
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製造用機器・システム業界4社。対象期間は2022年8~12月の直近四半期(4社いずれも22年10~12月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・キーエンス
増収率:24.5%(四半期の売上高2366億円)
・ファナック
増収率:16.5%(四半期の売上高2200億円)
・SMC
増収率:12.1%(四半期の売上高2059億円)
・マキタ
増収率:3.5%(四半期の売上収益1890億円)
製造用機器・システム業界4社は全て前年同期比で増収となった。中でも、キーエンスは20%超の高増収率を記録した。
キーエンスの利益面に目を向けると、「本業で稼ぐ力」を示す経営指標である売上高営業利益率(営業利益÷売上高)が第3四半期累計で50%を超えており、こちらも驚異的な水準をたたき出した。
その一方で、マキタは第3四半期累計の営業利益が前年同期比62.9%減、最終利益が72.3%減と大幅な減益に陥った。キーエンスと同じくファナックとSMCも増益で着地しており、今回分析対象とした4社ではマキタの「独り負け」といえる状況だ。
ただし、これまで本連載で解説してきた通り、マキタは20年7~9月期から22年1~3月期にかけて「7四半期連続」で2桁増収を達成していた。その原動力となったのは「巣ごもり需要」によって大きく伸びた電動工具などである。
マキタの株価は、好決算を連発していた21年9月には7000円台を付ける場面もあったが、今では見る影もない。22年10月には2500円台まで下がり、本稿を執筆している2月下旬は3500円前後で推移している。
かつての好調から一転して大幅減益となったマキタだが、その要因は何なのか。キーエンスが継続的に高い利益率をたたき出せる理由と合わせて、次ページで詳しく解説する。