「話す力もビジネススキルだ」。こう話すのは書籍『新時代の話す力 君の声を自分らしく生きる武器にする』の著者である緒方憲太郎さん。日本最大級の音声プラットフォーム「Voicy」の代表として、多くの「話す」に触れる緒方さんが、ビジネスパーソンに求められる「話す力」について語ります。なぜ、今の時代のビジネスパーソンに「話す力」が必要なのか。求められる人になるための「話す力」の正体とは何か。(本記事は、Voicy上で公開された「Voicy ITビジネスニュース」のインタビュー内容を記事化しました。構成/谷本明夢)

人間関係を円滑にするたった1つのスキルが「話す力」だ『新時代の話す力』を書いたVoicy代表の緒方憲太郎さん

コミュニケーションスキルが
社会全体で脆弱化している

――緒方さんの著書『新時代の話す力』は、どのようなきっかけで誕生したのでしょうか。

緒方憲太郎さん(以下、緒方) 「Voicy」という音声プラットフォームを始めて6年が経ちました。経営者としてたくさんの人と触れる中で、企業の中でコミュニケーションに関わる問題が起こっていることを、よく耳にするようになりました。

 例えば、リモートワークが増えてコミュニケーションや雑談が減ってしまったとか。マネジメントをしたくない人が増えたとか。1on1が苦手だとか。

 社会全体を見渡しても、価値観の多様化が進み、ライフスタイルも人それぞれ。一方で、人と人との接点を生み出すコミュニケーションスキルが、どんどん脆弱化している、とも言われています。

 相手のことを聞き出す方法とか、自分のことを伝える方法とか。人間関係の土台となるコミュニケーションスキルが低いと、当然ですが、人間関係もうまくいきません。チームや組織がうまく作れるわけがありません。

 実際、会社や組織を作っている人たちに話を聞いてみると、やはり「人を集めて大きなことを為すことがすごく難しい時代になってきている」と言うんです。

 しっかりとした人間関係を構築するには、「自分らしさ」を相手に理解してもらうことが必要です。そして、「自分らしさ」を理解してもらうには、やっぱり話して伝えるしかないんです。

 でも、ただただ「きれいに話している」だけでは、あなたの自分らしさは伝わりません。よくビジネスシーンでも、プレゼン内容を棒読みする人がいますが、単に情報を口にするだけでは、相手には全然響きません。

 そこで、日本でトップクラスの人々の「話し方」に触れてきている僕が、「話す力」について、根本から伝えたいと思ったんです。

 どうしたら人とうまく「話す」ことができるのか。どうすれば、自分の魅力をきちんと伝えられるのか。実際にVoicyで活躍するパーソナリティーさんの情報をまとめて、今回の書籍に盛りこんでいます。

「話す力」それは、
「人を腹落ちさせる能力」だ

――著書『新時代の話す力』の冒頭で、「『話す力』、それは『あなたが人から求められる力』である」と書かれています。こちらはどういったメッセージなのでしょうか。

緒方 話が下手でも人に求められている人って、ほとんどいないんです。スポーツ選手であれミュージシャンであれ、みなさん、話すことによって他者を魅了しています。

「自分がなぜ金メダルを目指すのか」「自分がなぜこの曲を作ったのか」というストーリーを説明して、他者に理解してもらっている。

 これは経営者や部長も同じで、「僕はこの事業部をこうしていきたいんだ」と説明するから、部下がそれを理解し、納得することができる。「自分は腹落ちできないとやる気になれません」と言う人がとても多い一方で、「人を腹落ちさせる能力」ってめちゃくちゃ難しいんです。

「話す力」があれば、「この人ともう一度話したいな」とか「この人に話を聞いてほしいな」と思ってもらうことができます。

 それって「その人と人間関係を結びたい」ということですよね。そう思ってもらうには、「相手に伝える能力」だけではなく、「相手のことを聞き出す能力」、そして「雰囲気と場をつくる能力」もものすごく大事です。

――それが、『あなたが人から求められる力』ということなんですね。

緒方 日本では「話す」こと自体が、すごく軽んじられています。海外だと、「話す人」は高く評価されるんです。「彼のスピーチはすばらしい」とか。学校でも、まずはスピーキングとリスニングから勉強していますよね。

 一方、日本では「読み」「書き」「そろばん」と続きます。「話す」も「聞く」も全然、学ばないんです。だから日本人は、人をほめるのが圧倒的に苦手だし、人の話を聞いたり、自分のことを話すのも苦手ですよね。「感動した」とか「素敵だな」と思ってもあまり言わないし、「君はすばらしい」なんてほめることもありません。

 しかし人々が多様化してくると、「あうんの呼吸」なんて通用しません。「何も言わなくても分かってくれることがすばらしい」という時代ではなくなっている。さらに今、リモートワークになって、雑談も極端に減っています。人との距離を縮められず、厚い人間関係を構築することが難しくなってしまった。

 このままいくと、日本社会はすごく殺伐として「会社で働くのはストレスになってしんどい」「面倒な人間関係から逃げたほうがいい」と思う人であふれてしまうかもしれません。中には組織で働くことに嫌気がさして、フリーランスという働き方を選ぶ人もいるでしょう。

 もちろん、フリーランスもすばらしい働き方です。ですが、会社だから、組織だからこそできることも世の中にはたくさんあります。人と人が一緒に力を合わせて働くときに、コミュニケーションができると、もめごとやストレスが減ると思うんです。

 つまり、「話す力」は実は現代社会においてとても求められている重要な能力なんです。それなのに、多くの人に欠けているスキルでもある。そんな能力、ほかにはあまりありませんよね。