「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。
お米を悪者にするのは、やめませんか?
「糖質制限」というと、私たちは、ご飯もパンも、麺類もケーキも、あらゆるものを一緒くたにして「食べてはいけない」と考えがちです。
その中でも、特にご飯(お米)は悪者と考えられています。
では、実際にお米は体によくないのでしょうか? 答えは、明快です。
日本の地域住民を対象とした大規模な疫学研究プロジェクトに多目的コホートというものがあります。この多目的コホートでは、お米をとる量と糖尿病の発症を調査しています。
その結果は、男性と女性では異なります。
男性は、お米を多くとっても影響はありませんでした。
一方、女性は、お米をとりすぎると糖尿病になりやすくなります。
しかし、細かく見ていくと、男性でも女性でも、1日1時間以上の運動または、肉体労働をしている人たちでは、お米の摂取量と糖尿病の発症とは関係がなくて、体を動かしていない事務仕事の方々は、お米のとりすぎが、糖尿病の発症と関係していました。
つまり、そもそも、お米が悪いのではなく、筋肉量や運動量が足りないことがいけないのです。
実際、厚生労働省の報告でも、戦後一貫して、私たちの平均歩数は減り続けていることがわかっています*2。つまり、「生活習慣を見直せ」ということです。
また、お米の健康への影響は、アメリカ・カリフォルニア州で行われた約9万5000人への調査でも実証されました。
お米の摂取は、腎臓がん、肺がん、すい臓がんなどでは関係ありませんでした。乳がんでは、わずかに関係があるかもしれないという結果でした*27。
つまり、様々な研究で「お米を食べていることが、健康によくないかもしれない」と調査されても、お米が悪者であるデータは、出てこないのです。
「働かざるもの食うべからず」
「腹八分目で医者いらず」
なんとなく、怠け者をしかるイメージのことわざですが、冷静に考えれば、あまり動いていないときは、食べすぎないようにというふうにも理解できます。
昔から伝わる言葉をかみしめて、安易にお米を減らす前に生活習慣を見直すべきなのです。
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授(常勤)、医学博士
1994年広島大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。1994年大阪大学医学部附属病院第三内科・関連病院で内科全般を研修。2000年大学院入学後より抗IL-6レセプター抗体の臨床開発および薬効の基礎解析を行う。2006年大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科助教、2011年漢方医学寄附講座准教授を経て2017年から現職。2022年京都大学教育学部特任教授兼任。現在は、先進医学と伝統医学を基にした新たな融合医学による少子超高齢社会の問題解決を目指している。
2013年より日本の基幹病院で初となる「がんケトン食療法」の臨床研究を進め、その成果を2020年に報告し国内外で反響。その方法が「癌における食事療法の開発」としてアメリカ・シンガポール・日本で特許取得。関連特許取得1件、関連特許出願6件。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)などの学会でがんケトン食療法の発表多数。日本内科学会総合内科専門医、内科指導医。日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本東洋医学会漢方指導医。最新刊『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』がダイヤモンド社より2023年3月1日に発売になる。