給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【株式投資必修講座 ステップ 3】成長株を見つけるためにチェックしたい、3つの要素とは?Photo: Adobe Stock

成長シナリオを考えるための3要素

 成長シナリオとは、その会社がどのような道筋で、どの程度に成長していくのか、という今後の見通しです。

 成長シナリオには、

 ①その会社の強み(他社よりも優れている点)
 ②経営者の能力と意欲
 ③成長余地

 の3つが重要な要素となります。

 ①の会社の強みについては、下図のようにさまざまな種類の強みを一覧にしました。

 1997年当時のPPIH(ドン・キホーテ)は、この表でいえば、コスト競争力、ノウハウ、人材、調達ルートなどの点で独自の強みがありました。

社長の柔軟な発想力とそれを実現する粘り強さがあるか

 ドン・キホーテは、当時から、とにかく安くて、品揃えが豊富である点が大きな魅力でした。ドン・キホーテに行けば定番商品だけでなく、意外で面白い商品も見つかって楽しい上に、とにかく安い。

 それを支えているのは、創業者の安田隆夫氏が何年も試行錯誤して粘り強く作り上げた独自の仕入れルートとノウハウでした。

 1997年当時はバブル崩壊の影響もあり、大手飲食チェーンや電気量販店の閉店が相次ぎましたが、安田氏はそこに目をつけて、それらの店舗の撤退跡地に安く出店するノウハウを作り上げました。安田氏には強烈な成長志向があるだけでなく、業界の常識にとらわれない柔軟な発想力と、それを実現するまでやり抜く粘り強さがありました。

 圧縮陳列(隙間なく商品を並べる手法)、手書きポップ、深夜営業など他社にはない独自の店舗運営のノウハウも、この当時から強みでした。

 さらに、店づくりや仕入れに関して各売り場担当者に権限移譲を徹底したことも、本社からのトップダウンが常識だった当時の流通・小売り業界では異例でしたが、それにより現場の人材が育ち、やる気のある優秀な人材も集まってきていました。

成長余地の大きさはどうか

 同社の店舗の魅力や人気ぶりは、店に行けば明らかでした。特に夜に店に行くと仕事帰りの人たちが集まり、商品のジャングルを冒険するように買い物を楽しんだり、たこ焼きを食べたり、ちょっとしたお祭り気分が味わえて、今までにない新しい業態ができたことが感じられました。

 これだけの人気店なのに、1997年当時はまだ6~7店舗しかなくて、全国展開の余地が大きく残された状態でした。業態や店舗の規模にもよりますが、小売店や飲食店の場合、全国展開に成功すると1000店舗以上になることが多いです。ちなみに、2022年9月時点でのドン・キホーテの店舗数は707店舗です。

 また、当時のPPIHの時価総額(株価×発行済み株数)は100億円程度。大企業になると時価総額が1兆円を超えてくることも多くなります。100億円とか200億円という時価総額は、株式市場の中ではかなり小さいほうであり、成長性が高い企業にとっては成長余地が大きいと考えられる規模です。

 時価総額が1兆円から10兆円になることもありますし、最近の世界的な流れとしては10兆円から100兆円になるケースもあります。したがって、時価総額が大きいからダメというわけではありませんが、時価総額が小さいというのは、株式投資の対象としては成長余地が大きい分、とても魅力的なのです。

インターネットを活用して情報を集めよう

 会社の成長性について考える場合は、その会社の強みや経営者についていろいろと知りたいところです。まずは会社四季報が手がかりになりますが、これはきっかけにすぎません。

 会社四季報は優れた情報源ですが、それをきっかけに関心を持ったら、さらに深掘りしていきましょう。その時に役に立つのはやはりインターネットです。

 会社のホームページには、社長のメッセージ、プレゼンテーション動画、決算短信、説明会資料、中期経営計画、統合報告書など、会社の成長シナリオや社長について多くの情報が得られます。こうした会社が提供する資料の見方については、のちほど詳しく説明していきます。

 さらに、インターネットで検索したり、YouTubeの動画を検索することによっても、社長インタビューや会社に関する記事などの情報が得られることもありますし、アナリストのレポートが入手できることもあります。このように、関心のある企業が出てきたらインターネットをフルに活用して、いろいろ情報を集めてみましょう(下図)。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/