株式投資をする人たちの間で大きな支持を集めている話題の1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60問のクイズを答えていくだけで、「株式投資のコツ」や「株の売買タイミング」がつかめる手軽さが人気だ。「チャートを勉強したけど成果が出ない……」。その原因はどこにあるのか。チャートで稼ぐにはどうすれば良いのか。『株トレ』の著者であり、ファンドマネジャーとして2000億円超もの資金を運用してきた経歴を持つ楽天証券・窪田真之氏に話を聞いた。(取材・構成/伊達直太)

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日足チャートと週足チャート、どちらを見るのがいい?

ーー窪田さんは、日足と週足、どちらのチャートを主に見ていますか?

窪田真之(以下、窪田):チャートに出現する買いや売りのシグナルには、効果の期限があります。その期限に影響するのが、チャートの時間軸(週足、日足、分足など)です。基本的な考え方として、チャートの時間軸が長くなるほど、シグナルの効果も長くなります。

 デイトレーダーであれば、日足や5分足など、短い時間軸のチャートを見る必要があるでしょう。しかし、日中は仕事などで忙しい人には、週足チャートをおすすめします。

 私の場合は、ファンドマネジャー時代から、「週足のローソク」「13週移動平均線(100日移動平均線)」「26週移動平均線(200日移動平均線)」の組み合わせで、チャートを見てきました。この組み合わせで強いシグナルが出れば、一般的には1週間以上効果が続きます。

 一方、日足ベースでチャート見ていたら、強いシグナルの効果は数日、下手したら1日で終わってしまいます。ですので、日中にチャートを見ることができない人が、日足ベースのトレードで勝つのは難しいでしょう。

 週足のチャートでトレードする株の候補を探し、週足で強いシグナルが出ている銘柄を見つけたら、日足を確認するという順番でチャートを観察するのがいいと思います。

 頻繁にあるわけではありませんが、週足と日足の両方で強いシグナルが出ているタイミングが最も理想的です。

チャートの「強い買いシグナル」とは?

ーーチャートの「強いシグナル」とは何でしょうか?

窪田:買っている人の積極性が売っている人の積極性に勝るときに、株価が上がっていきます。その積極性を、チャートで確認することができます。

 陽線が長ければ長いほど、買い手は急いで買いにきていることがわかります。また、出来高が大きければ大きいほど、たくさんの人が売買していることになります。

 つまり、長い陽線が出て売買高が急増していれば、たくさん投資家が積極的に買っていることがわかるわけですね。これが「強い買いシグナル」になります。

ーー「多くの投資家が急いで買いにきている」ことが大事なのですね。

窪田:その通りです。例えば、長期間にわたって1000円付近で値動きがなかった2つの銘柄あり、片方の株は突然1100円に上がり、もう片方は1050円に上がったとします。

 このような場合、突然1100円に上がった株の方が買い手の勢いが強いので、買うなら1100円に上がった方の株なんです。

「突然の大きな変化」が強いシグナルです。普段から乱高下している銘柄の場合、多少株価が動いたところで、信用できるシグナルにはなりません。

 この強いシグナルを可視化してくれる便利なツールが「ボリンジャーバンド」なのですが、説明が長くなってしまうので、ボリンジャーバンドの使い方については、ぜひ『株トレ』をチェックしてみてください。

13週や26週の移動平均線で大きなトレンドを確認する

ーーなぜ移動平均線は、13週や26週移動平均線を見ているのですか?

窪田:基本的な考え方として、13週や26週移動平均線が企業のファンダメンタルズを反映していると捉えています。

 例えば、短期的には上下しながらも、長期で見れば横ばいであった場合、13週や26週の移動平均線は一直線になります。これが何を意味しているかというと、その期間でファンダメンタルズに変化はなかったということになります。

 一方、ファンダメンタルズが右肩上がりであれば、13週や26週移動平均線も右肩上がりになっていきます。

 13週はだいたい3ヵ月(四半期)、26週は半年(半期)ですね。企業は、四半期決算で業績などの重要な情報を開示します。業績の変化は、売買の重要な材料であり、株価が動きます。

 つまり13週や26週移動平均線は、企業のファンダメンタルズが反映されたトレンドとして見ることができるわけです。

 5日や20日移動平均線を好んで使っている投資家もいますが、これらは短期的な需給によって上下してしまう移動平均線なので、ファンダメンタルズの変化を示す移動平均線として利用するには、期間が短すぎるでしょう。