2023年3月21日、モスクワのクレムリンで共同声明に署名した中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領2023年3月21日、モスクワのクレムリンで共同声明に署名した中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領 Photo:AFP=JIJI

3月20日に中国の習近平国家主席がプーチン大統領と会談し、ウクライナを巡る中国の仲介案について協議した。ウクライナを電撃訪問した岸田首相とは対照的にも見えるが、佐藤優氏は、岸田首相がゼレンスキー大統領に明言したあることで「日本も仲介役になるチャンスがある」という――。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

ウクライナ戦争を
停戦させる方法はあるか

 ロシアのプーチン大統領にとってウクライナでの戦争は、「真実のキリスト教(正教)vs悪魔崇拝(サタニズム)」の価値観戦争になっています。性的マイノリティーの権利を守る西側諸国を、キリスト教に反していると考えているのです。

 開戦当初は、ドンバス地域に住むロシア系住民70万人の権利の保全というリアリズムを掲げていましたが、サタニズムとの戦いに変わったのです。西側諸国は独裁者のプーチン大統領と妥協できず、ロシアは悪魔と妥協できない。この不毛な戦いは収拾がつきません。

 昨年2月24日の開戦時にプーチン大統領は、「特別軍事作戦」における三つの目的を示しました。ドネツクとルガンスクのロシア系住民保護のほか、ウクライナの非軍事化、そして非ナチ化です。

 ロシア側から停戦を持ち掛ける場合があるなら、ドネツク州とルガンスク州を完全に押さえた段階でしょう。さらに、ウクライナで政権が交代すれば、ロシア側は「ネオナチ勢力が去った」と戦闘をやめる口実ができます。そのタイミングを失すると、長い戦争になることを覚悟しなければいけません。

 それでは、プーチン政権が転覆する可能性はあるのか。