新刊『暮らしの信じ方』(ダイヤモンド社)の著者であるエッセイスト・古賀及子氏と作家・安達茉莉子氏が、隣町珈琲にて対談を行った。安達氏が、「楽しそうに本を作っている人」として対談相手に指名した古賀氏は、ライターから作家へと転身したキャリアの歩みを語った。(文/飯室 佐世子)

下手にこそ、価値がある
安達茉莉子(以下:安達):古賀さん、今日はありがとうございます。今回、「ちゃんとしなきゃを一旦脇に置いて、雑でも良いから本を作ってみようよ」という主題でお話を伺いたくて。
古賀及子(以下:古賀):「雑」は豊かさですからね。
安達:古賀さんは、エッセイストになる前に「デイリーポータルZ」というウェブメディアでライターをされていましたよね。その時に、個人でZINEも作られていたと聞いて。
古賀:そうなんです。ライター業とは別に、2018年ぐらいにブログに日記を書き始めて、そしたら毎日書けちゃったので、何か形にしたいなとZINEにして売り始めたんです。
本物の雑出版ですよ。もうびっくりするぐらい雑。
安達:古賀さんのZINE、レアですよね。もう売ってないんですか?
古賀:今はもう売っていないです。最初は本のデザインを自分でやっていたので、製本したら文字が真ん中の閉じる部分、ノドに食い込んじゃって。文字のサイズが大きいことも友達に格好わるいって言われてしまいました。
安達:そんなことが(笑)。
古賀:なので、私のZINEは「拙い」「下手」という意味の雑出版でもありましたね。
でも今思うのは、下手って価値ですよね。下手なものっておもしろいし、うまくなっちゃうと下手なものは作れなくなるから、絶対作って刻んでいった方がいい。
忘れられるから、大丈夫
古賀:結局、ZINEは10冊くらいは出したんじゃないかな。それがきっかけで、ありがたいことに単著デビューもしましたね。
安達:ZINEを10冊! すごい量ですよね。デビュー後もコンスタントに年数冊の本を出されていて、とにかく書く量が桁違いだと思うんです。
その筆力ってどうやって鍛えたんですか?
古賀:それは、やっぱりライター時代にたくさん書いたからだと思います。
私が在籍していた「デイリーポータルZ」は毎日11時と16時に更新することが決まっていて、それは絶対に守っていました。
安達:クオリティはどう担保するんですか?
古賀:クオリティはもちろん重要で、みんなでとても大切にしていましたが、何はなくとも、毎日2本更新することが最優先というのはありました。
安達:「この記事、イマイチだな」と思っても…?
古賀:すばらしいライターさんたちが集まっていて、イマイチな記事がありがたいことに出ないメディアなのですが、気持ちとしては、もう一歩でも出すぞっていう気概でやっていたと思います。
とにかく書く。何がなんでも書く。
安達:更新すること、続けることが何よりも大事。
古賀:基本的に、やらなくてもいいことをやるメディアなので、自分たちがやらないと終わっちゃうんですよ。
あの経験が、書くための筋肉になったと思います。
安達:書き続ける上で、すごく大事なことを聞いている気がします。
積み上げた先に、道ができる
安達:ブログがZINEになり、さらに本になり。日記が作家デビューのきっかけにもなったんですよね。すごいですね。
古賀:そうなんです。ただ、とんとん拍子というわけではなかったかなと思います。
ZINEを作り続けて、だんだん部数が増えたり、扱ってくれる書店さんが増えたりはしたけれど、お仕事の依頼はそんなには来ませんでした。
安達:1冊目の本が出て、どうでしたか?
古賀:世界ががらっと変わった感覚がありました。端的に言って、お仕事がぐっと増えました。
安達:そこからずっと、出版し続けているんですよね。日記を書き続けることが、今のエッセイストとしてのキャリアに繋がった。
古賀:本当に、そう思います。私、単著デビューが44歳とかです。もちろんそれまでもライターとしてネットに記事をたくさん書かせていただけていたわけですが、書籍はウェブとは違う界隈で、40代で軸足が移るとは思いませんでした。
安達:本を通して知る古賀さんのイメージって、迷いなく自分の道を選んで進んでいる方だったんです。でも今日、生身の古賀さんがどうやってここまで積み上げてきたのかを聞けて、すごく励みになりました。
古賀:やり続けて、気づいたらこうなっていた、という感じです。





