佐藤優「プーチンが戦争を5年以上続ける気でいる証拠を日本メディアは見落としている」2023年2月21日、モスクワで連邦議会に対する「年次教書演説」を行うロシアのプーチン大統領 Photo:AFP=JIJI

プーチン大統領は2月21日にモスクワで、連邦議会に対する「大統領年次教書演説」を行った。日本のメディアは詳しく取り上げていないが、佐藤優氏によると、ロシアを大きく変える「ある計画」が語られていたという。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

プーチンは米国の脅威を
肥大化させて認識している

 ロシアのプーチン大統領が2月21日にモスクワで、連邦議会に対する「大統領年次教書演説」を行いました。日本のメディアは、読み込み不足のためか、詳しく取り上げていません。しかし、大いに注目すべきポイントが幾つもあるので、紹介しつつ解説を加えます(日本語訳は私によるものです)。

 この演説は、ウクライナへ軍事侵攻を始めてからの1年間を総括する意味を持ちます。全体を聞いて抱いた印象は、「プーチン大統領は、米国の脅威を実態よりもかなり肥大化させて認識している」ということです。プーチン大統領は、こう語りました。

 ソ連崩壊後、第2次世界大戦の結果を修正し、1人の主人だけが存在する米国型の世界を築こうとしたのは彼らです。そのために、彼らは、ヤルタとポツダムの両方の遺産を否定するために、第2次世界大戦後の世界秩序の基盤を全て露骨に破壊し始めたのである。一歩一歩、既成の世界秩序を修正し始め、安全保障と軍備管理のシステムを解体し、世界中で一連の戦争を計画し、実行したのです。

 第2次世界大戦後に構築された国際秩序を変更しているのは、米国であるとの認識を示しています。

 特筆すべきは、核実験再開への言及です。プーチン大統領は、「悪魔崇拝」(サタニズム)を実践する西側連合の長である米国が新たな「核カード」を切ろうとしている、という考えを持つに至っています。これは危険な兆候です。演説の関連箇所を見ていきましょう。