佐藤優が明かす「ウクライナ戦争は“ドイツで進む過激化”がカギを握る」
ロシアのウクライナ侵攻から1年。両国ともに戦費が重くのしかかっている。元外交官で作家の佐藤優氏は、今後のカギを握るのは、圧倒的な経済大国のドイツだという。そのドイツで起きている急激な変化と米国の本音について語った。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
ロシアもウクライナも
膨らむ戦費
2月8日付の日本経済新聞に、ロシアの財政悪化を報じる記事が載っていました。
2023年1月の財政収支は1兆7600億ルーブル(約3.3兆円)の赤字となった。赤字額は歳入を上回る。原油相場の下落で石油収入が減少し、欧米諸国からの経済制裁の影響が顕在化した。長期化するウクライナ侵攻に伴う戦費拡大をまかないきれなくなっている。
同じく日経は、1月11日付でこう報じていました。
2022年暦年の財政収支は約3.3兆ルーブル(約6.2兆円)の赤字に転じたもようだ。(中略)有力紙ベドモスチは9月、政府資料をもとに、当初3.5兆ルーブルを見込んでいた国防費が3割以上増え、約4.7兆ルーブルにのぼる見通しだと報じていた。
では、ウクライナはどうなっているでしょうか。
ロシアの侵攻を受けたウクライナの戦費が、開戦から1カ月で約100億ドル(約1兆2200億円)に上ったことが分かった。今年の国家予算全体の約5分の1、国防費120億ドルの80%以上を既に使い果たしたことになる。(中略)ウクライナの2022年会計年度予算は歳入が約490億ドル、歳出が約554億ドル。
これは共同通信が昨年4月4日に報じたものです。
わずか1カ月でこの金額ですから、1年に及ぶ戦争にかかる費用が重くのしかかっていることは、間違いありません。しかも、ウクライナ政府が1月に発表した2022年の国内総生産(GDP)の速報値は、前年比30.4%ものマイナスでした。