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インキュベーションの虚と実

ピボットは罪か必然か
カン違いせず、大胆にやる事業転換

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第21回】 2013年2月18日
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間違いだらけのピボット
どう取り組めばよいのか

 間違いだらけのピボットはよく見受ける。それぞれのピボットの結果、市場に刺さらないという失敗は仕方がないだろう。しかし、ピボットへの取り組み方の間違いは避けたい。課題としては二つある。まず、マインドセット。そして、主語をもって取り組むことだ。

 ある日本のスーパーエンジェルは「やり切れ」と気合を入れる。軸足が定まらない起業家には正しいメッセージだ。しかし、ある日米のインキュベーターを経験した起業家は、「日本はがんばれと言うだけ。米国はダイレクトにガツンと言ってくれる」と語る。だから日本では、自分たちも若干どうかなと思いつつもそのまま走った。しかし、米国では、「顧客に聞いたか?お前がそう思ってるだけじゃないのか?」と詰め寄られ、実際はユーザーに刺さらないことが分かり、事業を大転換した。

 有り金はたいた大事業でもあるまいし、クイック・ピボットくらいはさせてやるべきだ。いくらスゴイ人でも、顧客が受け入れファンになってくれるか、本当に何が刺さるのか、当初からそう簡単に分かるわけがない。Fail fast(はやくあきらめる)するのもスタートアップの知恵だ。

 もちろん、思いつきで実験を繰り返して時間を浪費していては、未来はない。パッションとコミットメントは不可欠である。

 そして、主語をもって取り組むことだ。スタートアップがやろうとすることは様々でかつクリエイティブだ。イノベーションに金太郎あめ的な一律の策は無い。だから、主語が大切で、その文脈で考え、動くことだ。

 だから、完成度問題も一様にはとらえられない。事業特性によって、求められる完成度は異なる。エンタープライズ向けは、コンシューマー向けよりも、完成度の要求水準が高い。コンシューマー向けでも、決済がからむものと、無料の楽しいサービスでは、クリティカルさが異なる。

 デイビッドソン氏が言うように、企業のステージによっても大きく異なる。デイビッドソン氏は三つに大別したが、現実はさらにチューニングしなければならない。また、対象ユーザーがクローズドかオープンかでも、特定のファンか一般かでも異なる。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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