写真:選挙ポスター掲示板写真はイメージです Photo:PIXTA

統一地方選挙での若者の投票を呼びかける風刺動画が物議を醸している。「若者よ、選挙に行くな」と題したこの動画は、逆説的に若者が選挙で投票する大切さを説いているのだが、賛否両論が噴出している。筆者としては、この取り組みを支持したい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

表現が痩せると
発想も細る

 表現の自由の範囲は、社会が許容できるギリギリまで広げておく方がいい。社会的圧力によってであれ、それを恐れた自主規制によってであれ、表現を制限していると表現力が痩せる。表現力が痩せると、やがては物事を発想する力も細っていく。これは、まことにつまらないことだ。いわゆる「ポリコレ」や「言葉狩り」をやり過ぎすることの最大の弊害だろう。

 ちょうどいい検討例が現れた。趣旨としては今春の統一地方選挙で若者に選挙に行こうと呼びかける、インターネット動画のCM「若者よ、選挙に行くな」(笑下村塾作成)が物議を醸している。

 皮肉が利いていていいではないかという声もあれば、若者と高齢者の対立をあおるので好ましくないといった意見もある。

 動画を何度か観てみたが、結論は、「この程度は、全く問題ないではないか」だ。この程度の表現を抑圧したがるような、不寛容でおぞましくお節介な社会には「絶対に」なってほしくない。率直に言って、動画としての出来映えは今一つだと思ったのだが、内容はなかなか味わい深い。主たるメッセージが「若者は選挙に行った方がいい」という話なのは誤解のされようがないし、考える価値のある問題を複数提起している。