西側諸国が主導する世界秩序にはここ1年余り、歴史的な強い結束が生まれていた。背景には、米国と欧州諸国が一丸となって、ロシアの軍事侵攻を受けたウクライナへの支援に注力していることがある。その結束がここにきて障害に直面している。ウクライナ侵攻に絡むコストが膨張していることに加え、流出した米国の機密文書から、ウクライナ軍の弱点や米国による友好国への広範なスパイ活動が明るみに出たためだ。さらに、厳格な「ゼロコロナ」政策の下で積極外交を封印してきた中国の習近平国家主席が国際舞台に復帰し、欧米の間に亀裂を生じさせる機会を虎視眈々(たんたん)と狙っている。習氏は米国が中心となって中国の台頭を抑え込もうとしているとの認識を公然と語る。ここ1カ月足らずの間に世界の首脳らと相次ぎ会談。西側のコンセンサスにきしみが生じていないか目を光らせつつ、長年の友好国との関係強化に動いている。