「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つのの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!

もっとも効果的に幸福になる方法は、お金持ちになること

もっとも効果的に幸福になる方法は、お金持ちになることイラスト :市田ほのか / PIXTA(ピクスタ)

 大事な指摘をしておこう。「お金の限界効用が逓減するのなら、お金持ちを目指すことに意味はない」というひとがいるが、これはどうしようもないくらい間違っている。「お金と効用の関係」が教えてくれるのは、「もっとも効果的に幸福になる方法は、お金持ちになること」というまったく逆の原則だ。

 一定の閾値(独身なら年収800万円、家族なら世帯年収1500万円、世帯の金融資産なら1億円)を超えるまでは、どの金額でも、実際に感じる幸福度は理論的な幸福度を上回っている。年収800万円(独身)や世帯年収1500万円(家族)、あるいは預金通帳や証券会社の報告書の残高が1億円に向けて増えていくときは、幸福感や安心感は合理的な想定よりもずっと大きくなる。

 年収や資産を増やすことは、ドラッグやギャンブルで一時的に幸福度を上げるような副作用も(ほとんど)ないし、短期的な効用だけでなく長期的にも人生によい影響を与えるだろう。幸福になるための方法は星の数ほどあるだろうが、「お金持ちになる」ことほどシンプルかつ効果的な戦略はほかにはない。

 限界効用の逓減は、一定の閾値を超えると効用(幸福度)が上がらなくなることだが、それと同時に、その閾値に至るまでは効用が大きく上昇する。だとすれば、これを利用しない手があるだろうか。

 もちろんこれは、「すべてのことを犠牲にして金持ちを目指せ」ということではない。そんなことをすれば、失うもの(恋人や家族、生きがい)の方が多くなるだろう。だがそれでも、幸福になりたいひとが真っ先に取り組む課題は金融資本を大きくすることなのだ。

※この記事は、書籍『シンプルで合理的な人生設計』の一部を抜粋・編集して公開しています。

橘玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。最新刊は『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)。毎週木曜日にメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」を配信。