ミニバンほどの大きさの筒型の深海潜水艇「タイタン」にかつて乗船した人たちは、自分たちが死ぬかもしれないと分かっていた。乗船前に署名した免責条項には、死亡のリスクが少なくとも3回記載されている。水面とつながるものなしに海中深くまで潜ると、陽光は徐々に遠ざかった。小さなのぞき窓から、真っ暗な海中に光る生物が見えるようになった。骨まで凍るような寒さが、タイタンの湾曲した壁に広がった。コメディー作家のマイク・レイス氏(63)は昨年夏のツアーにメモ帳と鉛筆を持ち込んだ。船が故障したら、「世界への最後の贈り物」として海底からジョークを書くつもりだったという。2021年のツアーに参加したジョセフ・ウォートマン氏(53)は、タイタンのハッチは外側から施錠された状態で閉められており、中にいると身が引き締まる思いがしたと振り返る。