欧州は対中関係に急ブレーキをかけない「デリスキング」(脱リスク)を図っている。最近起きた二つの展開により、この葛藤が明らかに和らいだ。また、自滅的な保護主義に傾斜し過ぎずに、欧州のハイテク産業とサプライチェーン(供給網)を保全することの難しさが浮き彫りになった。欧州は中国で成功を収めているだけに、慎重に歩を進める必要がある。米国や台湾など一部のアジア諸国ほどの成長・革新ペースの実現に苦戦を強いられている点も、慎重を期したい理由だ。第一の展開は、欧州連合(EU)が、デリスキングが実際に何を意味するのかを示したことだ。EU執行機関の欧州委員会は初めて「経済安全保障戦略」を発表。地政学的緊張が高まり、技術的変化が加速する中、「特定の経済フロー」がもたらすリスクをいかに最小限に抑えるかを議論した。中国はこの文書で名指しこそされていないが、その存在が大きく浮かび上がる。EUは欧州が長年促進してきた経済の開放性を維持すると強調する一方で、慎重な扱いを要する技術が「懸念される目的地」に流出し、軍事利用される事態を未然に防ぐため、先進半導体や人工知能(AI)といった主要分野の輸出・対外投資についての規制強化を提案した。