もともと統一教会に銃を崇拝する教義があったわけではないのですが、こうした背景もあってサンクチュアリ教会の銃マニアぶりが加速した。アメリカにおける銃を持つ権利を主張したり、大統領選で不正があったと主張して武装闘争を連想させるようなメッセージを発信したりもしています。宗教的な教えとは少し違う印象はあるものの、サンクチュアリ教会の重要な思想として、ある種の教義のようなものになっているように見えます」
本家の統一教会も、もともと反共産主義という点でQ・Jアノンとの親和性がある。
統一教会は1960年代に日本で「国際勝共連合」を設立し、反共運動を展開してきた。対日本共産党は言うまでもなく、中国や北朝鮮についても共産主義国家である点を批判し続けている。教団のグループ企業が北朝鮮に進出し自動車製造や観光開発等の事業を展開している一方で、日本やアメリカでは反共産国家を旗印に保守運動や保守的な政治権力に食い込む。そんな立ち回りを見せてきた。
統一教会系のメディアである「世界日報」は、たとえば大統領選でトランプ氏が当選を確実とした2016年より前の2014年に、〈天安門25年、中国共産党独裁に未来はない〉とする社説を掲載している。2020年1月には、やはり統一教会系英字メディアである「ワシントン・タイムズ」が、新型コロナウイルスの起源について中国の生物兵器研究に関係しているとする記事をネット配信。11月には世界日報が、〈バイデン氏 不正の疑い拭えぬ「勝利」〉と題する記事をネット配信。ワシントン・タイムズに掲載された記事の日本語訳として〈バイデン氏息子 中国から巨額資金〉という記事も配信し、トランプの政敵への批判も行っている。
特にワシントン・タイムズは、コロナ関連や大統領選関連ではフェイクニュースの発信源の1つとして扱われることもある。しかし世界日報はお構いなしに、バイデンが大統領に就任して以降も、こまめにトランプの動向や発言を紹介している。
「トランプ支持、反中国という点で、統一教会はQアノンやサンクチュアリ教会と向いている方向は同じです。ただ、関係者がネット上で過激なパフォーマンスを見せたり、路上でトランプ支持のデモ活動をしたりした話は聞きません。日本の統一教会は勝共連合の傘下に勝共UNITEという青年組織を擁しており、安倍晋三が首相だった頃には安倍を応援するデモや街宣も行っていました。しかしトランプに関してそういった表だった動きはない。彼らは彼らなりに、世間から過激と見られたり奇異に捉えられたりする活動を避けたがる傾向があるので、そういう理由かもしれません。逆にサンクチュアリ教会は、銃愛好集団という側面も含めて、独自路線を隠すことなく突っ走っています」(前出の鈴木氏)