米サンクチュアリ教会は
武装化を目指すカルト集団か

 2021年5月28日に『Vice』が、サンクチュアリ教会がテキサス州に40エーカー(約16ヘクタール)のキャンプ場を購入したと報じた。記事は、亨進氏が信者に大統領選の不正を訴え「私たちは戦いの準備と訓練をする必要がある」と通告したと伝えている。

 テキサス州ウェーコでは1993年にブランチ・ダビディアン事件が起こっている。最終戦争に備えて大量の武器で武装したキリスト教系カルト「ブランチ・ダビディアン」の施設を連邦捜査官が捜査。これをバビロニア軍による攻撃と捉えた信者たちが銃撃戦を繰り広げ、2カ月近く施設に籠城した。最後はFBIが戦車や装甲車を使って強行突入。火災が起こり、子供を含む信者ら81人が焼死したとされる。

『Vice』は、サンクチュアリ教会が購入したキャンプ場はウェーコから40マイル(約64キロ)の場所にあると伝えており、ツイッター上ではブランチ・ダビディアンを想起する声も上がっている。

 また『Fort Worth Star-Telegram』は、ドクロのマスクをかぶってバイクにまたがる亨進氏の写真を紹介し、〈マッドマックス風の「銃の教会」〉と評した。亨進氏自身が、こうした写真をインスタグラムに掲載している。好戦的なビジュアルは、一貫してサンクチュアリ教会のネット発信の象徴的なスタイルになっている。

 もはや単なるネット上の陰謀論集団ではなく、武装化を目指すカルト集団として警戒すべき存在かもしれない。日本サンクチュアリ協会については、さすがに銃を所持しているという話は聞かないし、『マッドマックス』風のコスプレも見かけない。しかし儀式に際してモデルガンを構えて記念写真を撮影したり、21年8月にも広島県の山中で軍事訓練を行うことを公式サイトで告知するなど、類似の活動や発信は見られる。

 それでも、日本のネット上での影響力は強くはない。牽引役を果たせるほどの影響力はなさそうだ。前出の鈴木エイト氏は、サンクチュアリ教会とネット文化の関係をこう語る。

「2ちゃんねる全盛期の2000年代初めにはサンクチュアリ教会はまだ分派しておらず、統一教会でした。統一教会や関連団体である国際勝共連合の関係者などが2ちゃんねるで“工作”をしているという話は、噂程度には聞いたことはあります。近年でも、例えば自民党政権と統一教会との関係を指摘する記事をネットメディアで書いても2ちゃんねるやネトウヨ界隈では盛り上がらない。ネトウヨは嫌韓だが自民党とつながりが深い統一教会は叩かない、と言われることがあり、確かにそういう印象はあります。統一教会か、あるいは勝共連合などを通じて付き合いがある保守系のネットユーザーなどが手心を加えている可能性はある。しかし統一教会の影響力がことさらに強い印象もなく、教団本体の広報活動は、おおよそネット文化に慣れ親しんでいるとは思えない稚拙さがあります」