具体的にはつくばエクスプレスなど鉄道整備のため、または福井県のえちぜん鉄道のように鉄路維持のために自治体が出資する事業者が26社。国鉄分割民営化にあたり旧国鉄線(未成線含む)を引き継いだ事業者が33社、整備新幹線開業によって経営分離された並行在来線の運行会社が8社、JR貨物と自治体が出資する貨物専用鉄道が9社だ。
また京成電鉄における新京成電鉄、北総鉄道、小田急電鉄における箱根登山鉄道、江ノ島電鉄、阪急電鉄における北大阪急行電鉄、能勢電鉄など大手私鉄・JRのグループ会社が36社あり、この他、第三種鉄道事業者が23事業者、民間貨物専用鉄道が1社、大手私鉄に属さないケーブルカーが6社存在する。つまり、残る33社が独立系の中小私鉄である(図1参照)。
断っておくと、これは筆者による分類であり、明確な定義があるわけではない。歴史的経緯から大手私鉄が主要株主に名を連ねている事業者や、自治体からの出資を受けている事業者もあるが、ここでは連結や持分法が適用されないという意味で「独立系」と称することにしよう。
このうち、三大都市圏の鉄道事業者を除き、それぞれの地域経済で大きな影響を持つ「地方大手私鉄」として、鉄道・バス事業の比率が大きい広島電鉄と富山地方鉄道、比率が小さい静岡鉄道、伊予鉄道をピックアップし、2018年度と2022年度の連結決算から各社の特色とコロナ後の経営の在り方を見ていこう。
広島電鉄と富山地方鉄道が
本業不振なのに最終黒字な理由
4社のうち、売上高に占める運輸セグメントの割合が最も高いのが広島電鉄だ。2018年度は60%で、次いで流通業が15%を占めていたが、同年から不採算部門となっていたスーパーマーケット事業をマックスバリュ西日本に譲渡したことで、2022年度には運輸業が65%まで伸びている。
3%まで低下した流通業に代わって、次点の17%となったのは建設業。2025年春の開業を予定している広島駅ビル建て替え、および路面電車乗り入れ工事関係の売り上げが増えたためだ。
一方、営業利益の面から見ると、主力の運輸業は2018年度時点で約221億円の売り上げに対し約16億円の営業赤字を計上していたが、コロナ禍を経て売上高は約178億円に減少。営業赤字は約40億円となった。
利益を下支えしていたのが不動産業だったが、販売部門では分譲マンションの販売が一段落したのと、賃貸部門ではテナントの契約終了、所有権売却で減収となり、営業利益は約11.8億円から約5.4億円に減少。これにより連結営業損失は約4億円から約32億円に拡大した。
ところが当期純利益で見ると約6.4億円から9.4億円と約3億円の増益となった。これは2018年度にはなかった宮島口整備事業に係る受取補償金約28.8億円とバス事業への補助金約12.2億円が交付されたためである。