地方鉄道の存続や利用促進策、バスへの転換などを議論する協議会を国が設置できることなどを盛り込んだ改正地域公共交通活性化再生法が4月21日、参議院で可決、成立した。だが、地方鉄道の経営を根本的に解決するためには地域そのものをもり立てるしかない。そのヒントとなるかもしれないJR西日本と広島県の「瀬戸内三市(竹原市、三原市、尾道市)」による取り組みを現地取材した。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
地域衰退の解決で
注目される「関係人口」
ローカル線のあり方を巡る議論が進んでいる。地方鉄道の存続や利用促進策、バスへの転換などを議論する「協議会」の設置や、自治体や住民の合意を得られれば柔軟な運賃設定ができる「協議運賃制度」などを制度化した改正地域公共交通活性化再生法が、4月21日に参議院で可決、成立。28日に公布され、半年以内に施行される予定だ。
国鉄民営化から36年が経過し、沿線自治体の人口減少、高齢化、自動車の普及、高規格道路の整備、そしてコロナ以降の鉄道離れなど、経営環境は激変している。
鉄道の特性を発揮できない輸送密度(1日1キロ当たりの利用者数)200人/日未満の「限界ローカル線」はもちろん、2000人/日未満のそれなりの存在感を持つローカル線ですら、中長期的には存続の危機にある。もはやイベント列車の運行などの小手先の対策では延命は不可能だ。
そうなると道路中心のまちづくりにあわせて、バスなど小回りの利く交通機関に転換するか、鉄道を中心としたまちづくりに転換するか、選択肢はどちらかしかないが、それにしても地域の衰退が止まらなければ、経営はいずれ立ち行かなくなる。根本的な解決のためには、地域そのものをもり立てるしかない。
そこで注目されているのが「関係人口」だ。これは2017年頃から広まった用語で、その地域に住む「居住人口」と、観光で訪れた「交流人口」の中間に存在する多様な形で継続的に関わる人と定義される。
これまで地方は定住人口の増加を目指して移住促進策に注力してきた。2017年に国土交通省が行った調査によれば、三大都市圏在住者の2割が「地方に移住してもよいと思う」と回答しており、国民の6割が三大都市圏出身といわれる中、自然環境豊かな「田舎」への憧れは一定数あるようだ。
しかし実際に移住に踏み切れる人は限られており、小さなパイを地域間で奪い合う形になるし、苦労して移住者を確保しても、それだけで減少分の人口を補うことは不可能だ。そこで移住はしないまでも、愛着ある地域に定期的に関わる人々を増やすことで、担い手不足の解消や消費の拡大につなげようというのだ。
そんな中、JR西日本と竹原市、三原市、尾道市の「瀬戸内三市」は2021年3月、「関係人口創出に関する協定 ~せとうちファンづくり協定~」を締結し、地域外の多様なファンづくり、地域との関係性強化を進めている。筆者は取り組みを実際に見てほしいというJR西日本の招きで、現地を取材してきた。