「マナーを守らず捨てるのか、落としてしまったのかわかりませんがマスクが一番多いです。コロナ禍に限らず飲み残しの飲料の入ったペットボトルも相変わらず多い。次いでビニールの雨具、それからビニール傘。マスクと同様、吹き飛ばされたなどの理由によるものもあるので、マナーを守らず捨てていったかはわからないです」
マスクや雨具のほか、どんなごみが出てきたかを資料を見ながらあげていただくと、登山用品一式なのか!?と思うほど様々なものが出てきた。
「昨年のごみを見ると、ヘッドランプ、壊れたストック、登山靴、衣類……様々なものがあります。五合目でも売っているんですが酸素缶を捨てる方もいて、スプレー缶の処理は危ないのでとても困ります。酸素缶は吸入する部分だけを捨てていく方も多いです。そのほか、使い捨てカイロ、ストックのゴムキャップというのも結構多い。そのままにしてしまうと環境破壊につながります。何らかの形で、誰かが山から降ろさないといけない。『山になんでゴミ箱がないんだ』という方がいますが、ゴミを落とす行為者に責任があり、罰せられることなんです。だから原則ゴミは持ち帰ってください。国や自治体はきちんと呼び掛けています」
富士山クラブのような団体の呼びかけもあり、もちろん、多くの登山者たちはゴミを持ち帰っている。
「マナー向上事業として外国人観光客だけでなく、登山者たちにポリ袋を配布しています。富士山クラブの調査では、そのポリ袋はみなさん捨てずに持ち帰っていただけています。私たちはこれからも呼び掛けを継続していきます」
最後に、七井さんが「本当に困っている」というのが、ペットボトルに入った尿。
「山頂から山麓にかけての清掃活動もやっていますが、富士山麓を半周している国道138号、139号に、ゴミがまた増えてきています。アルピニストの野口健さんとも活動しています。一番困るのがペットボトルに入れて捨てられるし尿です。きちんと調査をしたわけではないですが、長距離運転手さんがしてしまうのと、観光などで車で訪れた方で、例えばお子さんが我慢できずにしてしまうなどと推測されます。山道なので駐車するスペースはほとんどありません。ちょっとした駐車スペースがあるところには、ペットボトルが捨ててあることが多いです。統計的にカウントしていないので正確な本数はわからないですが、ペットボトルが10本捨ててあったら、1本には尿が入っている感じです。私たちはマナー向上の事業であり、し尿処理の事業ではないので、これは問題提起したいです」
世界遺産登録から10年の節目の年に改めて、日本の誇れるもののひとつを守っていかなければならないと感じる。
(AERAdot編集部・太田裕子)
※AERA dot.より転載