話題の新刊書『おもしろ雑学 日本地図のすごい読み方』からの抜粋で、日本全国、北から南まで、日本地理の知られざる仰天知識を紹介していく。今回は、土地の帰属をめぐって県同士が揉めているという、知られざる県境問題について。
静岡県、山梨県ともに
対立は避けたかったが…
日本を象徴する存在でありながら、いまだ富士山に県境がはっきりしない場所があるというから驚きである。
それは、ずばり富士山頂。この県境問題は江戸時代から浮上していたといわれ、400年間解決を見ていない。富士山は静岡県と山梨県の2県にまたがる形でそびえているが、その山頂の県境をどこに引くかについては、いまなお明確にはなっていないのだ。
ただ両県としては、帰属による対立は避けたいという思いが強いらしい。2013(平成25)年に富士山が世界遺産に登録されたのを機に、翌2014(平成26)年1月、両県の当時の知事は「県境を定めず富士山の保全に互いに協力していこう」と歩調を合わせている。
ところが、そんな穏やかな状況に水を差す出来事が起こった。その原因をつくったのは、あろうことか、地図を作製する行政機関である国土地理院だった。
富士山の研究でも知られる地理学者の田代博氏の指摘で判明したのだが、国土地理院の電子版において富士山の山頂「剣ヶ峯(3776メートル)」地点に、パソコンのカーソルをあわせると「静岡県富士宮市」という住所が表示されたというのである。