私たちは、たくさんのお金を稼ぎたいと考えている。しかし、稼いだお金を「どう使うか」まではあまり考えていない。その結果、必死に稼いだお金を預金通帳に残したまま亡くなってしまう人も多い。「稼いだ金を使いきれなければ、人生の貴重な時間が無駄になる。私たちは”ゼロで死ぬ”ことを目指すべきだ」。そんなメッセージを伝える『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』という書籍が話題だ。今回は、本書の中から、稼ぎすぎて、人生の貴重な時間を無駄にしてしまった男性のストーリーを紹介する。
30代で資産40億ドルを稼いだ男
私の友人であり、後に億万長者になるジョン・アーノルドは、私と知り合ってから数年後、ケンタウルスという名のヘッジファンドを立ち上げた。目的は、エネルギー取引の専門知識を活かして財産を築き、良い人生を送ることだ。
ジョンは大金を稼ぎ出した。だが、良い人生を過ごしているようには見えなかった。
そしてある日、ヘトヘトになるまで働いた後、ジョンは私のほうを振り返ってこう言った。
「もし僕が1500万ドルを稼いでもなお仕事を続けようとしていたら、ぶん殴ってくれ」
しばらくして、その目標は達成された。私は彼の顔にパンチを見舞ったりはしなかった。そして、ジョンは働き続けた。
その後、引退までに稼ぐべき目標額は上がり続けた。1500万ドルどころか、やがてそれは2500万ドルになり、最終的には1億ドルになった。
結局、純資産が1億5000万ドルに達しても、ジョンはトレードをやめなかった。心から仕事が好きだというわけでもないのに、だ。
その後、38歳で働くのをやめたとき、ジョンの資産は40億ドルに膨れあがっていた。
必要以上の金を稼ぐために、「30代」という貴重な時間を失ってしまったジョン
38歳の若さで引退するなんて、ほとんどの人にとっては夢のような出来事だ。だがジョンにとって、それは数年遅すぎた。30代の価値ある時間が過ぎ去り、稼いだ金は一生で使いきれないほどに膨れ上がっていた。
金を稼ぐことだけに費やした年月は二度と返ってこない。ジョンは二度と30歳にはなれないし、子どもたちが赤ちゃんに戻ることもない。せっかく富を築いても、すでに豪邸に住んでいるし、欲しいものは手に入れている。
彼のように、「必要以上に稼ぐために働くこと」をやめるのは難しい。なにしろ働けば、「金」という社会に公然と認められた形の報酬が与えられるからだ。
もちろん、ジョンの例は極端なケースだ。だが、ジョンがはまった心理的な状況は、決して特別なものではない。それは超富裕層だけの問題ではないのだ。
どれだけ働いて金を稼いでも、まだ稼ぎ足りないと感じる人は多い。資産が増えるにつれてゴールポストも動き続ける。それは収入の量とは関係ない。
「使わない金」を稼ぐために無駄に働いていないか?
真実は1つだ。
莫大な時間を費やして働いても、稼いだ金をすべて使わずに死んでしまえば、人生の貴重な時間を無駄に働いて過ごしたことになる。その時間を取り戻すすべはない。
100万ドルの資産を残して死んだら、それは100万ドル分の経験をするチャンスを逃したということだ。たとえそれが5万ドルだとしても、5万ドル分の経験をするチャンスを逃したということになる。
それでは、最適に生きたとは言えない。
(本稿は、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の内容を抜粋・編集したものです)