写真:1万円札を見つめる女性Photo:PIXTA

お金の「増やし方」について長年アドバイスをしてきた筆者だが、今回はお金の「使い方」の大切さについてお伝えしたい。お金には「使い時」があり、ただただ貯めるよりも大事な「使い道」があるのだ。(経済評論家 山崎 元)

「増やす」のも大事だが
お金には「使い時」がある

 筆者は日頃専らお金の増やし方について情報を発信し、本なども書いている。そう考えると、ヤケクソのように見えるタイトルだが、筆者は本気でそう思うし、人生の幸せにとって大事な話なのでお付き合いいただきたい。

 先日、ある読者の勧めで『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス著、児島修訳、ダイヤモンド社)を読んでみた。この読者氏は、お金を貯めて増やしたのはいいが、気持ち良くお金を使うことができなくなってしまったと悩んでおられた。この本の内容が「心に刺さる」とおっしゃる。

 豊かなエピソードが面白い本なので、読者にはぜひ本を手に取ってもらいたいのだが、筆者にとって印象に残った主張は以下の四つだ。

(1)真に価値のあるお金の使い道は「経験」だ。良い経験は思い出として長らく効果を発揮する。
(2)人間の楽しむ能力は年齢に依存する。適切な時に惜しまずにお金を使え。
(3)「仕事が面白い」は適切にお金を使わない理由にならない。
(4)寄付や相続も生きているうちに有効に行え。

 筆者は、濃淡はあるが、いずれの主張にも賛成する。特に(2)はその通りだと思うし、(3)は有効な批判的指摘として耳が痛い。