私たちは、「老後のため」に一生懸命働いて得たお金をコツコツと貯金しがちだ。そして老後もつい、「万が一」に備えて節約し続ける傾向にある。そうすると、亡くなった時には、仕事を頑張って貯めたお金が、結局使われないまま預金通帳に残されることになってしまう。これは、あまりにももったいないことだ。
そんな問題意識をテーマに書かれたのが、人生の幸福度を最大化する「お金の使い方」を教えるベストセラー書籍『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』だ。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、退職までに「1億円」もの資産を築いた人が陥った“残念すぎる末路”を明かす。(構成/根本隼)

退職までにコツコツ「資産1億円」を築いた人が陥った“残念すぎる末路”とは?Photo:Adobe Stock

貯金を崩さないのは「人生をムダにしている」

 多くの人びとは、余裕をもって老後の生活を過ごせるように、現役時代からお給料の一部をコツコツと貯金し続ける。「年間●万円は貯める」「老後までに●万円は確保したい」という目標を立てている人もいるだろう。

 そして、いざ老後を迎えても、「いざという時」に備えて、積み立てた老後資金をなかなか崩そうとしない。なるべく預金残高が減らないように、節約生活を続ける人も多いだろう。

 しかし、『DIE WITH ZERO』の著者、ビル・パーキンス氏は、「働いて得たお金に手をつけないのは全くのムダだ」と警鐘を鳴らしている。というのも、現役時代に貯めたお金を使わずに取っておくのは、若い時の自分がお金を稼ぐために費やしたエネルギーや時間を無に帰しているのと同じだからだ。

 そこで本稿では、死ぬまでにお金を使い切る「ゼロで死ぬ」という生き方を提唱する、斬新な切り口が話題のベストセラー『DIE WITH ZERO』より、預金を残したまま亡くなると「どれだけの時間がムダになるのか」を解説する。

人生でムダに費やした時間を計算してみよう

 使わない金を稼ぐために、どれだけ人生の時間が無駄になるかについて考えてみよう。

 ここでは架空の45歳の独身女性、エリザベスを例にする。彼女はアメリカの会社で事務職として働き、年収は6万ドル(約600万円)。所得税や保険料などを差し引いた可処分所得は4万8911ドル。勤勉で、週平均50時間働く彼女の正味の時給は19.56ドルだ。

 ここでは話をシンプルにするために、退職まで給料の額は変わらないことにし、45歳まで老後資金は貯めていなかったことにする。また、住宅ローンを完済したマイホームは、売れば45万ドルになる。昨年は例年並みの3万2911ドルを使った(1万6000ドルを貯蓄できた)。

 この条件で計算すると、エリザベスは65歳で定年退職した場合、32万ドル(20年間、毎年1万6000ドル)を貯められることになる。持ち家の資産価値(変わらないものと仮定する)である45万ドルを足すと、65歳の退職時の資産は77万ドル(約1億円)だ。

 この77万ドルで何年生活できるかは毎年の生活費次第だが、ここでも話を単純にするために、エリザベスは年間3万2000ドルを使うと仮定する(金融資産から得られるリターンも物価上昇と相殺されるものとする)。
(P.71~73)

「退職時に資産1億円」もあった人の“残念すぎる末路”

 この前提だと、彼女は24年弱生活できる(77万ドル÷3万2000ドル)。だが、エリザベスが退職から20年後、85歳のときに亡くなったとすると、13万ドルの資産を使わないことになる。このとき、エリザベスは13万ドル分の経験を逃してしまったことになる

 それ自体が残念なことだが、それだけではない。これだけの金を貯めるために、エリザベスはどれだけの時間を費やしたのだろう。13万ドルを時給の19.56ドルで割ると、6646時間になる。

 そう、エリザベスは生きているうちに使い切れない金を稼ぐために、こんなにも長い時間を費やしたのだ。週50時間労働で計算すれば、2年半以上にもなる。言ってみれば、2年半タダ働きしたのと同じだ。人生の貴重な時間とエネルギーを、もっと他のことに使えたかもしれないのに。

 少なくともあと2年半以上前には引退できたし、生きているうちにもっとたくさんの金を使うこともできた。だから、私は以下のメッセージをみなさんに伝えたい。ゼロで死ね。生きているうちに金を使い切ること、つまり「ゼロで死ぬ」を目指してほしい。そうしないと、人生の限りある時間とエネルギーを無駄にしてしまう。
(P.73~74)

(本稿は、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』より一部を抜粋・編集して構成しました)