「お金を使えない人」
「投資が受け入れられない人」

 家計状況をTさんから聞いて、毎月の生活費の少なさに驚き、またしっかり貯金を貯められていることに感心しました。同時に頭をよぎったのは、「Tさんは、お金を使えない人なのでは?」という疑問。自己投資的なものは図書館で済ませ、交友関係も少なく、この先に楽しみにしているものはお金だけ。「投資に興味がある」とは言うけれど、貯金にはない投資のリスクを考えた時、彼は受け入れられるのだろうかと思ったのです。

 Tさんは「いろいろ経験してみたいし、貯金よりも増えるのならお得だと思う」と投資に前向きで、期待もしているようです。家計状況的には投資を始めるに当たって問題になることがないので、投資の始め方や基本的な知識について話を進めていきました。

 詳しく説明していくにつれ、今までの堅実な習慣から、Tさんは投資に対して不安を感じたようです。特に、“リターンを得るには、リスクを取らなくてはいけない”ということが、いちばん引っかかったようでした。時間をかければ複利の効果もあって増えていくということはシミュレーションを見て期待したようですが、リスクの話を聞くと怖気付いてしまいました。

 散々迷った挙句、「これから投資を始めるかどうかは、もう少し時間をかけて検討をする」ということになりました。

 これからも同じペースで貯金ができれば、将来的にも足りるほどの充分な資金ができるでしょう。ですが、この後もずっと、何の楽しみも持たずにひたすら貯金をするだけというのは、残念な生き方のように思ってしまいます。「貯金が楽しい」「お金が大好き」それはそれでいいのです。ただ、少しでも投資に興味を持ったのならば、少々のリスクがあっても覚悟をし、少しだけでも経験してみることで、その大好きなお金についての視野を広げられるのに……。リスクを恐れすぎてそうした可能性をなくしてしまうのは、もったいない考え方だなと思います。