インフレに打ち勝つ安全な手段を求める投資家は、もうそれほど遠くまで探しに行く必要がなくなった。実質利回り(米国債の名目利回りからインフレ率を差し引いたもの)は2009年以降なかった水準に上昇している。10年物TIPS(物価連動国債)の利回りに基づくならば、実質利回り(実質金利とも呼ばれる)は2%前後となっている。実質利回りの上昇は貯蓄に励む人にとっては朗報だが、市場や経済に波及していくにつれて状況は複雑さを増す。それは借り入れコストが上昇に向かう事実を反映するが、そうなれば経済成長は鈍化しやすい。また実質利回りの上昇は、投資家をMMF(マネー・マーケット・ファンド)のようなキャッシュ(現金・現金同等物)に近い商品へと向かわせ、株式や暗号資産(仮想通貨)、金などの比較的リスクの高い資産から遠ざける傾向がある。もし十分長くその動きが持続すれば、これも経済に影響を及ぼしかねない。