東京大学の赤門Photo:PIXTA

「FIRE」(金銭的に自立し、早期退職する)という言葉が知られるようになった今も、達成者の“生の声”はあまり世に出てこない。そこで連載『FIRE達成「5人衆」に聞け!』では、FIREを成し遂げた5人の男たちに、ベールに覆われていた生活の実態を明かしてもらった。#5のテーマは「教育」。資産を築いて教育資金にゆとりがあるにもかかわらず、5人衆は「子どもの受験に興味がなくなった」と声をそろえる。その理由とは――。(取材・文/ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎、監修・取材協力/作家 寺澤伸洋)

「子持ちでFIRE」達成者が語る
子どもの「お受験」への本音

【FIRE達成5人衆】
・寺澤伸洋@ohtsuma) 46歳。灘高校・東京大学卒。日系企業を経て「GAFA」日本法人の1社で部長職を経験後、2021年にFIRE達成。作家・講演家・Excel講師としても活動し、『子どもを2人育てながら1億円貯めた夫婦の40代FIREまでの道のり』(Amazon KDP)など著書多数。金融資産額は約1億円。

・ぱすたお@himoneeeeet) 33歳。元銀行員。メーカーに転職後、21年にFIREを達成した最年少メンバー。現在は子育てに奮闘中。金融資産額は約6000万円。

・じんべい@jinbeitesla) 41歳。教育関係の会社を経て、23年3月にFIRE達成。テスラ株に集中投資して大成功。太陽光発電システムも3基保有。金融資産額は約7000万円。

・けん@ken1_biz) 42歳。東京都庁に長年勤めた後、23年3月にFIREを達成。界隈では異色の「元公務員のFIRE民」。約5500万円の金融資産に加えて、不動産を複数所有。

・よしお@FP_4403) 46歳。博報堂出身。元マネーフォワード本部長。ベンチャー企業などでも要職を歴任後、23年7月にFIRE達成。金融資産額は約2億円。

・5人衆がFIREに至るまでの経緯を語った記事はこちらから【#1】【#2】

――FIREを達成した「5人衆」にお集まりいただきました。皆さんは全員お子さんがいらっしゃいますが、豊かな資産を手にしたことで教育方針は変わりましたか?お子さんが有名な私立校や難関大学に合格できるよう、進学塾や習い事に投じる金額を増やしたとか…。

けん:実は逆なんです。僕はFIREを機に教育費を見直しました。うちの子は小学校6年生と幼稚園の年長なのですが、僕がバリバリ働いていたときの方が教育費をたくさん投じていました。

 僕自身が働き方を考え直す中で、「必ずしもいい学校に行くことが全てではない」という価値観に変わってきたので、家族で話し合った末に子どもの教育環境を再構築しました。

 子どもの側も親にやらされるより、自分で主体的に勉強してくれたらいいなと思って。

――今、お子さんは塾に一切通っていないんですか?

けん:塾を完全にやめたわけではなくて、オンライン学習サービス「スタディサプリ」に完全シフトしました。元々通っていた英語教室も、家族で利用できるオンライン英会話に切り替えました。対面の習い事に行く時間が減った分、「もっと友達と遊んでおいで」と伝えています。

 その結果、上の子は毎朝6時くらいに起きて、一人でスタディサプリの動画を見ながら自主的に勉強する習慣が付いたんです。かけている時間は30~45分くらいです。その分、学校から帰ってきたら、すぐに友達と遊びに出かけてしまいます。あとは英会話も自分でやるようになりました。

 僕は来年、家族でオランダに移住する計画です。移住後は子どもにインターナショナルスクールに通ってもらう予定なのですが、「現地で少しでもコミュニケーションをとれるようになっておきたい」と子ども自身が言っています。

 親がお金をかけて環境を固めるよりも、意外と子どもに任せた方がうまくいくのかもしれません。

――灘高校・東京大学を卒業し、「GAFA」日本法人のうちの1社でマネジャーを経験している寺澤さんは、FIRE後に教育観は変わりましたか?