いずれにしても、「学歴」の落し穴に陥る人は、「学歴的能力」においては、極めて優秀なのですが、その「優秀さ」に過大な自信を持ち、「学歴的能力」に安住し、実社会で求められる「職業的能力」を意識的に身につけていこうと努力をしないため、成長が止まってしまうのです。

もし、あなたが、偏差値の高い有名大学を出て、学歴的には優秀であるとの自負がありながら、そして、論理思考と専門知識においては誰にも負けないとの自信がありながら、内心、「自分は、周囲の期待ほどには活躍できていない」と感じているならば、『なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか』で語った「棚卸しの技法」を始めとする「成長の技法」は、その壁を打ち破る大きな力になるでしょう。

穴に落ちるのは「学歴エリート」だけではない

しかし、実は、この「学歴」の落し穴に陥る人は、「高学歴」の人だけではありません。
高い学歴を持たない人でも、この落し穴に陥ることが、しばしば、あります。

例えば、「自分が職場で評価されないのは、学歴が高くないからだ」と考え、懸命に専門知識の勉強をして、「学歴」の代わりになる、様々な「資格」を取ろうとする人です。

もとより、専門知識を身につけること、専門資格を取ることそのものは、それなりに意味のあることなのですが、この人が、その職場や職業で「活躍する人材」になりたいと思うならば、むしろ、そうした「学歴的能力」を高める努力以上に、「職業的能力」を高める努力をすることこそが、正しいキャリア戦略なのです。

従って、もし、あなたが、高い学歴を持たない人であっても、この「学歴的能力」と「職業的能力」の違いを理解し、同書で語った「反省の技法」を始めとする「成長の技法」を実践し、「職業的能力」を磨く努力を続けられるならば、「学歴的ハンディ」を超え、その職場において「活躍する人材」になっていくことができるでしょう。

山の「中腹」を「頂上」だと勘違いしてしまう人

では、第2の「実績」という落し穴とは何か。

それは、プロフェッショナルとしての成長を「山登り」に譬えるならば、山の「中腹」を「頂上」であると勘違いしてしまうという落し穴です。

言葉を換えれば、仕事の世界において、いわゆる「井の中の蛙」や「お山の大将」になってしまう人です。

そして、これもまた、優秀な人ほど陥りがちな落し穴です。

なぜなら、ある程度の優秀さを持っている人ならば、どのような職場でも、どのような職業でも、10年も、真面目に一つの仕事に取り組んでいると、自然に仕事を覚え、「実績」を残し、周りからも頼りにされるようになり、「自分は、それなりに仕事はできる」と思うようになるからです。

そして、ここに落し穴があります。

なぜなら、我々が、よほど謙虚な心の姿勢を身につけていないかぎり、優秀な人であれば、あるほど、その「自分は、それなりに実績を残してきた」「自分は、それなりに仕事はできる」という心境は、心の奥深くに「無意識の慢心」を生んでいくからです。

そして、まさに、この「無意識の慢心」が、我々の成長を止めてしまうのです。