2023年9月19日、米ニューヨークで開かれた国連総会で演説するウクライナのゼレンスキー大統領2023年9月19日、米ニューヨークで開かれた国連総会で演説するウクライナのゼレンスキー大統領 Photo:EPA=JIJI

ポーランドとウクライナの関係が急速に悪化している。きっかけは、ウクライナ産農産物の輸出問題だが、新規の武器支援の中止にまで発展し、打開策が見えない。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は根底にある歴史問題に触れ、「新規の武器支援の中止は、ウクライナ戦争に無視できない影響を与える」という。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

「ウクライナ避難民への支援打ち切り、
ウクライナのEU加盟阻止」という脅し

 ロシアによる軍事侵攻が始まって以来、ウクライナへの支援を積極的に行ってきたのが、西の隣国ポーランドです。第2次世界大戦でソ連に占領された歴史もあるポーランドでは、ロシアへの敵対心が強いのです。

 キール世界経済研究所(ドイツ)によれば、昨年1月末から今年7月末までにポーランドが表明した軍事支援は、30億ドル(約4490億円)に達します。米国やドイツに次いで、6番目の多さです。ウクライナの避難民も150万人以上受け入れてきました。

 そのポーランドとウクライナの関係が急速に悪化しています。きっかけは、ウクライナ産農産物の輸出問題でした。

 ロシアの侵攻で、ウクライナは黒海の港から農産物を輸出できなくなりました。EUは、陸路で西へ運び、域内の港から輸出するように支援してきましたが、そのウクライナ産の安い農産物が、通過途中のポーランドやハンガリーなどの国内で流通し始め、自国の農産物の価格を下げてしまいました。

 EUはこれら5カ国の農家を保護するため、ウクライナ産農産物の輸入を一時的に禁止する規制を設けたのですが、9月15日に延長しないことを発表します。ポーランド、スロバキア、ハンガリーの3カ国は強く反発し、独自に禁輸を続けると宣言しました。

 ウクライナは、輸入禁止措置は国際義務違反だとして、この3カ国を世界貿易機関(WTO)に提訴。ポーランド政府は反発し、国内に滞在しているウクライナの避難民およそ100万人への財政支援を、来年には打ち切る可能性を示唆しました。ウクライナのEU加盟を阻止するという脅しもかけました。

 加盟が実現すれば、ウクライナの農産物が大量に流入してくるから、というのが理由。ポーランドがここまで強硬な態度に出るのにはわけがあります。